「ケッヘル」上・下/中山可穂/文春文庫。
▼表紙
http://ameblo.jp/grayground/entry-10293772061.html
<プロローグ的な>
主人公は失恋ととある事情で日本を離れている、木村伽椰。
途方に暮れていたフランスの港町。
海岸には指揮者のごとく猛然とタクトを振る男がいた。
生粋のモーツァルティアンである彼・遠松鍵人は伽椰の窮状を知ると、当座の仕事として鎌倉の留守宅にいる猫の餌係を提案する。
3年ぶりの日本へ。
彼女はそこに何が待ち受けているか、まだ知らなかった。
<感想>
モーツァルトが好きなかた、
陰謀・恋愛・そして何より旅が好きなかたにオススメ。
少しでも書くと全てがネタばれそうだ。
伽椰添乗員としてののケッヘル番号の旅と過去が大きく絡まって、眼前の事象がくるくると変わり続ける。
ミステリー仕立ての壮大な旅行記であった。
長い長い旅だった。
作者の目論見通り読んでも読んでも終わらなかったが飽きなかった。常にギリギリのテンションが連続するため体力がいる。
伽椰の一直線恋愛に笑いと涙が溢れるも、読み途中は過去の重さに耐えかねた。
最終的に泥沼を考えていたが爽やかな終わりもいい。
予想外な叙述の仕掛けがあって読む側としては嬉しかったが、う~む、それにしても因果な親子だ。
ノートルダムのシーンはどちらも素晴らしかった。やはり主人公は語り手の伽椰よりも、実時間帯では裏方に近かった社長(←あえて名前は伏せる)のほうなのだろう。
▼ここから先はネタばれ感想▼
辰巳極悪過ぎる。合理的な欲望の叶え方は納得する部分もあるが、クレバーじゃない。十分父親が遺伝してまっせ。
千秋が哀れ。やっと安心して眠れるようになるのだろうか。
お話としては絶対にTの子供なんだろうが、実はずっとあれはTじゃなく辰巳(辰巳もTだな;)の子供だと思っていたよ。瞳の描写があっただろうか。2読目で確認しよう。
後半は、アンナにさほど魅力を感じなかったのが敗因か。伽椰がのめるほどに冷める。ピアノは聴いてみたいが。
鳥海と青山のストイシズムが印象に残る。