「潤一」/井上荒野/新潮文庫。
- 潤一 (新潮文庫)/井上 荒野
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私が潤一と会ったのは、冬の雨の中だった。
なんてね。
各話とも『わたしが潤一と会ったのは、○○だった。』で始まる連作短編集。
14歳から62歳までの女性が、自分が出会った潤一という男について語る。
あらすじから「ニシノユキヒコの恋と冒険」(/川上弘美)みたいな作品を想像していたが、こちらはまた別の方向に淡々とした人でした。途中までは似ていると言えば似ているが、どちらにしても沸点は低いです。
残念ながら潤一の魅力がわからなかったなぁ。「シグナレス―合図―」(/若木未生)で、会いたいと思っている人の姿を見せる妖者がいたのだが、あれかな。最終話までは、ひたすら語り手の女性に対して都合の良い男であったのが気持ち悪かった。
背が高く細身で、藁色の髪に洗いざらしのTシャツが似合う少年のよう。でも女慣れしていて、少し強引で丁度良く無神経な、そんな若い男。
職業アイドルかね、君は。
ただ、足の向くままに生きている潤一の作りものでないつかみどころの無さや、気が付くと去っていることになるところは、ひどく共感できるものだった。
連作短編は最終話がキイになることが多い。
この作品にも全体の仕掛けはあるが、不思議なことに全く印象が変わらなかった。破壊力が足りない。
<参考画像>
- ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)/川上 弘美
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