(声の出演) タマ : ? | 猫の島調査報告書

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月夜にささやかな酒宴 ことのは積み上げ十年目

なんとなく、
柄にもなくため息を吐きたい次第なので元気になれる本を1冊。



「流れる」/幸田文。
ご存知、幸田露伴→幸田文→青木玉とつづく流れの幸田節全開の作品です。
新潮文庫版が読みやすいかな。


いわゆる『全集』と名のつく函入り上製のコテコテな全集を購入した経験は殆どないのですが、このかたの全集が手元にあったら幸せだろうと思います。


さて
物語は置屋の女中である主人公を中心に進みます。

正直なところ、読み始めは死語に等しい単語の多さにくらくらしたものです。それでも構いません。新しい状況に戸惑うのは主人公も同じ。
そして読み進める内に彼女のしっかとした冷静な視線に、読者も同じように世界を見つめられるような心持ちになるのです。

一旦得た視点は、本を閉じても再現ができるものだと私は思っています。嫌な言い方をしてしまうと、これはそういった財産に成りうる作品だと認識しています。



先日の竹本住大夫「文楽のこころを語る」に収録された対談で、杉村春子の素晴らしい演技を絶賛されているのが舞台版「流れる」。
DVDも出ているので是非とも原作と合わせて鑑賞したいものです。