■本日の言葉「frosty reception」(冷淡な歓迎、冷たい反応)
肩の力を抜いたゆるい「暇ダネ」英語をご紹介する金曜コラム、今週はこれぞ「ざ?ひまだね」と胸を張って言える、ビキニを着せられてしまった裸の雪像についてです。(gooニュース 加藤祐子)
○遅くなってすみません…
コラム掲載があまりに遅れて深夜になってしまい、逆にちょうどいいのですが。今週は米ニュージャージーで「猥褻(わいせつ)」と言われてしまった雪の「ミロのビーナス」像を取り上げます。せっかく庭に造った雪像がご近所や警察から「冷淡な歓迎(frosty reception)」を受けてしまったというこちらのBBC記事などが元ネタです。もちろん「frosty reception」の「frosty(霜だらけ、とても冷たい)」は話題が雪像だからこその言葉遊びですが、「frosty reception」は「よそよそしい」とか「冷淡」などの意味でよく使う表現ではあります。
複数報道によると、地球温暖化にも関わらず北極振動の影響(だそうです、気象庁によると)で大雪続きのアメリカ東部で、わざわざ庭に雪だるまならぬ雪の「ミロのビーナス」を作ったのは、ニュージャージー州のエライザ?ゴンザレスさん。女性です。
BBC記事に載っている「使用前」写真をみると、確かに雪だるまというか雪像としてゴンザレスさんの言うようにきれいだとは思いますが(ご本人は「すごく美しいと思った」と)、「ミロのビーナス」とはちょっと違うんじゃないかとも思います。まあそれはいいのですが。
けれども、ご近所のどなたかが警察に通報してしまったのだとか。どういう内容だったのか正確な文言は分からないのですが、BBC記事は「too risque(きわどすぎる)」という苦情だったと書いているので、つまりは「目のやり場に困る」という言い分のようです。
「雪像を壊すか隠すか」選ぶ羽目になったゴンザレスさんは、BBC記事にあるように、水着を着せて「cover up(覆い隠した)」のですが。妙に隠したせいで逆に「nike
exualised(性的なものになった)」という感想だそうです。
記事の写真を見て、妙に小さいビキニトップに加えて、議論の余地なく「緑!」「青!」と自己主張する色彩のビビッドさが気になるところですが、下手に隠す方が気になるし猥褻だったりするというのは、全くその通りだと思います。「秘すれば花」とか「陰影礼賛」とか、まさに隠した方が神秘的で魅惑的で蠱惑(こわく)的だというのは、真理だと思いますね。少なくとも、日本人にとっては。
○お風呂文化の有無がポイントか
ほどよく隠されているものにはドキドキする日本人ですが、逆に、銭湯とか温泉とかであけっぴろげに開放されている裸にいちいちドギマギなんかしてられないよ——という国民的な共通認識もあるように思います。では、あけっぴろげに開放されている裸の像はどうでしょう?
日本には(幸か不幸か)裸体を三次元の像にして町中のあちこちに置いておくという趣味がずっとなかったので、考える必要のない命題ですが、ヨーロッパ(特にイタリア)に行くと、時にしみじみ考えざるを得ないテーマではあります。あっちにもこっちにもあるので。
こんな明るい陽の光のもと、公衆の面前でこの巨大なダビデ像(のレプリカ)は立派に堂々と全裸だったりするのだけど、これは猥褻ではないよなあ。ではフィレンツェのこの広場は日本で言うところの銭湯なのだろうか——と。
余談ですが、最近読んでいたく感銘を受けた『テルマエ?ロマエ』というマンガに着想を得ますと、共に公衆浴場文化の発達した古代ローマ人と日本人は、公衆の面前におけるあけっぴろげな全裸への許容量が同じように高いのだろうか、などとも連想しています。まったくの戯言ですが。とは言え、このマンガの表紙絵が実に示唆的で。これが書店のマンガコーナーにドーンと平積みになっている時、ある一点を「じーっ」と凝視してしまうか、凝視してドキドキするか、ただ「ふむ」と思って本をレジに持って行くかは人それぞれでしょうが、ついドキドキしてしまうタイプの人が「庭先に裸の雪像を置くな」と警察に通報したりするかなと思います。
そういうタイプの人とはつまり、日本人や古代ローマ人とは真逆に、公衆浴場文化をもたず、開けっぴろげで開放的な全裸というものに全く耐性のない人たち。つまりは、清教徒に端を発するアメリカの真面目な人たちです。そういうアメリカで私は70年代に小学生だったのですが、当時観ていたテレビドラマの再放送では女性のおへそを映しただけで大騒ぎでした。なのに、いざ日本に帰国したら、刑事ドラマや時代劇の再放送で女性の上半身裸がボンボン出放題。あれはカルチャーショックでした。数年前にはジャネット?ジャクソンがスーパーボウルで胸を……というハプニング(?)もありましたね。
話がそれましたが、不特定多数の目に触れる場所での裸体にそれくらいアレルギー反応を示すアメリカで、「ミロのビーナス」もどきを庭先に陳列したりしたら、通報されてしまうのはそれは無理もないやな、と思いました。「frosty reception」を受けるのも、そりゃそうだ、そらミロ、と……。お後がよろしいようです。
◇本日の言葉
?frosty reception = 冷淡な歓迎
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◇筆者について…加藤祐子 東京生まれ。シブがき隊と同い年。8歳からニューヨーク英語を話すも、「ビートルズ」と「モンティ?パイソン」の洗礼を受け、イギリス英語も体得。怪しい関西弁も少しできる。オックスフォード大学、全国紙社会部と経済部、国際機関本部を経て、CNN日本語版サイトで米大統領選の日本語報道を担当。2006年2月よりgooニュース編集者。米大統領選コラム、「オバマのアメリカ」コラム、フィナンシャル?タイムズ翻訳も担当。英語屋のニュース屋。