PRESIDENT 2014年3月17日号 掲載
■製造メーカーが記されたプライベートブランド
かつて小売業がつくるプライベートブランド(以下、PB)はある種、日陰者だった。商品の価格は類似のナショナルブランド(以下、NB)に比べて明らかに安いものの、品質に関しては価格相応かそれ以下という印象だった。PBを製造しているメーカーも、小売業者の下請けに甘んじる中小の無名メーカーが多く、価格の安さと相俟って品質への不信感を高めていた。
このタイプの商品のネガティブ?イメージを打ち破り、価格訴求ではなく、価値訴求という新次元の扉を開いたのが、セブン&アイグループの「セブンゴールドシリーズ」である。このラインナップは、有名メーカーと共同開発した商品ばかりであり、価格も同種のNBに比べて明らかに高く設定されている。それにもかかわらず例えば「金の食パン」は昨年5月の発売から12月までで実に約2500万食と、驚異の累計販売量を記録している。
同社は、自社のオリジナル商品にいわゆる「PB」という言葉を使わない。その理由は、通常のPBの場合、販売元の名前は明記しても、製造メーカー名を開示しないケースが多いからだ。これに対し、セブン&アイグループのオリジナル商品は、製造メーカーをきちんと明記し、どことチームを組んで商品を開発したのかがわかるようにしている。それゆえ、同社は以前から、 オリジナル商品の開発のことをチームマーチャンダイジングと呼んでいるのだ。
今回お話をうかがった株式会社セブン-イレブン?ジャパン商品本部FFデイリー部チーフマーチャンダイザーの中村功二氏は、小売業のオリジナル商品の発展を3段階に区分している。第1段階は、安さを追求する時代で、どこでつくっているかわからず、「安かろう、悪かろう」の商品を出していた時代だ。続く第2段階は、NBの売れ筋商品の品質と同等あるいはそれ以上でありながらも、実勢価格で2、3割安価というようなものだ。いわゆる「お買い得感」のある商品を提供していた時代である。そして今日迎えている第3段階は、小売業のオリジナル商品だからこそ、「優れている」、あるいは中村氏の表現によると、「セブン&アイホールディングス(以下セブン&アイHLDGS)の店に行かないと味わえない」という価値訴求型のオリジナル商品の時代だという。今や小売業のオリジナル商品は、品質面でNBを凌駕し、それどころか模倣される存在にまでレベルアップしているのである。事実、食パンに関して、有名メーカーが明らかに「セブンゴールド 金の食パン」を意識した商品の開発を行っている。
このようなプレミアムタイプの商品をつくり始めた当初、既存メーカーから、厳しい意見が多数寄せられたという。同社では年2回、全国1万6000店の加盟店オーナー、従業員らを集め、商品政策や売り場計画について説明し、ともに勉強する場を設けている。昨年4月、「金の食パン」をはじめてその場にお披露目した際に、取引先のメーカーも来場していた東京会場で、メーカーの多くが「みんな1回はやりたいと思うんですよね。こういう高級パンを。ただなかなか続かないので1カ月以上売り場に残り続けたら拍手しますよ」と揶揄されたという。明らかに小売り主導の商品開発を軽視したメーカーの上から目線の意見だ。
ところがセブン&アイグループには確固たる勝算があった。それは事前のテストで高成果を得られていたからである。同社のデータに基づく仮説検証、そしてそこから導かれる戦略提案の的確さは有名だが、その姿勢はセブンゴールドの開発にもいかんなく発揮されていた。
この商品の開発においては、まずマーケットの全体を把握した。パンを例にとると、日本のトータルのマーケットでは、菓子パンと惣菜パンのような味付け系カテゴリーと、食パンとロールパンのような主食系カテゴリーとは、その規模がだいたい拮抗している。民間の経済研究所の統計調査やDONQ、アンデルセンなどの専門店でも食パンがよく売れ、拮抗している事実をつかんでいた。ところがセブン-イレブンでは、食パン、ロールパンのシェアは著しく低く、調査時点ではあと4倍ぐらい売れてもおかしくないほどの低水準だった。このような実態を踏まえ、戦略対象を「食パンにしよう」ということになったという。
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