米国
1)ソーシャルメディアの台頭と連動したディスプレイ広告市場の再成長ステージ
2)DSP & RTB 市場成長とチャレンジ
3)データ取引市場の拡大とターゲティング商品の多様化
4)Video 広告市場拡大の幕開け
日本
1)DSP & RTB 元年
2)アトリビューション指標へのチャレンジ
3)オーディエンスターゲティング市場の幕開け
1. 米国市場から日本を予想してみる
「日本は3年遅れだよね」
オンライン広告の世界(特にディスプレイ広告)で仕事をしていると、よくそんな言葉を耳にします。本当にそうなのかを、1つ1つ例を上げて検証することは、このコラム目的と離れてしまうので割愛しますが、確かに直近で起きていることからもそのような傾向はありそうです。例えば最近では「DSP」「RTB」。これらは図1にある通り米国では2007年前後に市場がある程度確立されました。そして既に始まっていた「Ad Exchange」という「場」の存在と連動して市場を形成しています。一方では日本では2011年にある程度のプレイヤーが出揃った段階といえます。もう少し古く遡れば、アドネットワークや SEM の最適化プラットフォームなど、新たなテクノロジーに紐付いた市場は3-5年遅れで日本にやってきて、ある程度の市場規模まで成長を遂げてきています。
ディスプレイ広告 新たな潮流 2012
そういった観点でみると、これから先日本ではどんなことが起こると想定されるのでしょう。まず、米国の市場予測はどうなっているから考え見たいと思います。
ディスプレイ広告 新たな潮流 2012
こうしてみると、市場の伸びは順調であることがうかがえます。特にディスプレイ広告は2015レブロン には200 億ドル(約1.6兆円)市場になると予想されています。
将来的には、ディスプレイ広告ではどんな分野が伸びていくのか。市場予測を深堀するとVideo 広告が一番大きな伸びを示していることが分かります。
ディスプレイ広告 新たな潮流 2012
2. ディスプレイ広告としての Video フォーマットの可能性Video 広告は2011年に新たな指標と共に米国では大きく成長しました。特にソーシャルメディアとの連動が指標軸として加わり、実際に広告を掲載したサイト数、視聴した人数、視聴時間、そしてソーシャルへのアクションなど広告主にとっては比較的判断しやすい指標が出揃ってきた感があります。この新たな指標の確立が、日本ではなかなか浸透し切れなかった感のある「アトリビューション」視点の評価と並ぶものになりそうです。まず Video というブランディングに依り易いフォーマットでインタラクティブかつ分かり易い評価軸であるという点が大きいと感じます。日本の広告主の多くは、未だにブランディングとパフォーマンスに分かれた評価をせざるを得ない組織が多く、前者は TV などの4マスメディアとの比較ができる分かり易い指標を求めています。一方、後者はより ROI にフォーカスした直線的な指標を必要としていると感じます。「アトリビューション」がパフォーマンスの評価にブランディングの視点を持ち込みたいという点で効果的だと思いますが、TVCM などと比較して単純に分かり易い指標を用意するという視点では、単なるディスプレイ広告から少し進んでブランディングに寄与しやすいフォーマットを使った結果として、深く洞察できる指標と一つとなればより有効になるでしょう。
3. DSP と RTB の今後
2011年は日本では「DSP & RTB 元年」というべき1年になりました。特に RTB に関しては多く事業者同士での連結が進んだことで市場に盛況感が出てきた感があります。一方で既に2007年前後に同様の流れがあった米国の状況を見てみると、これからの日本がどう進んでいき、どんな課題に直面するかがある程度予測出来そうです。
ディスプレイ広告 新たな潮流 2012
米国ではどの程度 RTB での取引やエクスチェンジでの取引が拡大しているのだろう。と思い、図4を見てみると、確かに RTB もエクスチェンジ市場も大きく割合を伸ばしていることが伺えます。とはいえ、ディスプレイ広告取引額の全体のわずか13%程度であり、RTB に至っては未だ8%程度の広告枠でしか取引が実現できていません。市場の伸びとしては大きい、とはいえ我々が日本で想像しているような劇的なパラダイムシフトは起きていない。というのが実情ではないでしょうか。そして同じようなことは、DSP にも起きています。図5にある通り、Worldwide の広告主への調査では DSP へのシフトは劇的に起きているわけでないことがうかがえます。
ディスプレイ広告 新たな潮流 2012
今後のコラムの中でも提言していきたいと思うのですが、技術の進化とそれを活用する人間たちの理解度がマッチし、かつその市場が大きくする事業者(プレイヤー)たちが出揃ったタイミングでインターネット広告の世界では市場が大きく成長するステージに入ると言えそうです。その理解でいけば米国でも未だに完全なシフトは起きてはおらず、今後の市場の伸びしろは非常に大きそうです。一方で日本においても同様な流れで市場が成熟していくことを考えると、この分野が完全に成熟するのは2015年以降になるのではないでしょうか。
4. データ取引市場の成熟
インターネット広告に詳しい方なら一度は見たことのあると思う、「カオスマップ(LUMA Slide)」ですが、2010年度と2012年で大きな違いの一つがオンラインユーザーデータを用いた市場の拡大が挙げられます。リターゲティングを含む、インターネット上の行動データを基にした個人を特定しない「人(オーディエンス)」への配信、いわゆる「オーディエンスターゲティング」においてデータを何らかの形で提供する事業者が2010年は22社だったものが、2012年には36社に拡大していました。恐らく今年は「データ」を扱う事業者が、日本のオンライン広告の市場にも増えていくでしょう。
ともすると正式な理解がなかなか得られていない、この「データ」と「広告」の部分について、次回のコラムから詳しく述べていきたいと思っています。
記事提供:アドバタイジングドットコム?ジャパン 事業開発部部長 竹谷直彦