日本人はエジプトと聞けば、何を連想するだろうか。
天を衝くピラミッド、ツタンカーメンに捧げられた至宝の数々、絶世にして悲劇の美女クレオパトラ…
テレビでエジプトが取り上げられる時はこの3つが題材になり易いそうだ。
しかし私の旅の主目的はこれらではなく、
犬童千絵先生の『碧いホルスの瞳-男装の女王の物語-』という漫画の聖地を巡ることだった。
「碧いホルスの瞳 -男装の女王の物語- 1」犬童千絵 [ハルタコミックス] - KADOKAWA
この作品の主人公はハトシェプストという
3,000年以上前に君臨した女性ファラオである。
女王は友好的な交易や外交で国を豊かにした統治者であり、国交が絶えて久しい、もはや伝説上の存在になりつつあった他国:プントに交易を目指して遠征するという一大国家プロジェクトを実現した偉人である。
建築家センムトを起用して革新的な葬祭殿や巨大なオベリスクを建築し、男尊女卑の傾向が強い当時において周囲の圧力を跳ね返し、男装の王としてエジプトを繁栄に導いた。
そんな女王の一生を描いた作品である。
女王に関する記録は後の時代に意図的に削られており、資料が乏しい。
女性がファラオになった形跡を残せば、後の時代で王位争いの要因になると判断されたようだ。
この作品はそうして生じた空白を豊かな想像力で補い、新たな命を吹き込んでいる。
妻、母、王、女王と様々な要素を抱え、様々な困難を乗り越えて生き抜いた人間の生涯が活写されている。
日本ではこの女王の知名度は低いが、この物語に惹かれてエジプトに行きたいと思った。
女王とセンムトの物語を思い浮かべナイル川を往くファルーカに乗って眺めた夕陽のことを、私は一生忘れないだろう。
この作品を携えて聖地巡礼ができて本当に幸せだった。
エジプト、特にルクソールに行く方には是非ともご一読いただきたいと願ってやまない。
