graterの小説保管庫

graterの小説保管庫

graterが趣味で書いた小説を保管するブログ。

Amebaでブログを始めよう!
イラストや最新情報が載っている本ブログはこちら
創作日和

・小説保管庫
「fairy」の表紙へ
イラストや小説の最新情報はこちらの本ブログで
創作日和(21話以降はこちらへ)

・小説保管庫(作品一覧)
小説「fairy」(20話まで)
新大阪駅で新幹線の切符を買う玲奈。

「ふぅう、電車にはかてねぇな」

酔っている間に無理をしたせいか、今回は降りてすぐに復活とは言えず、少し息を整えている龍助。

「でも、変な髪の人には勝ったよ♪」

「変な髪?」

変な髪の人とはおそらく先ほどの若者二人のことであろう。

「ありがと」

切符を買ってきた玲奈は話を聞いていたのかそう呟く。

「ん?」

龍助が玲奈の方を見ると玲奈が恥ずかしそうに龍助のことを見つめていた。

「助けてくれてありがと」

「おう! 玲奈は好きな人だからな、だから守る。電車のせいで危なかったけどな」

龍助はそう答えて笑った。



「ねぇ……その好きってどういうこと?」



(何聞いてんの私)

「へ?」

龍助はいまいち意味が分からず聞き返す。



「今まで……好きになった人いないんだけど……」



(え? ちょっと私?)



「私……龍助のことが好きなの」



玲奈は顔を真っ赤にしながらもそう告げた。

「えっ!?」

龍助の戸惑いにも反応せず、玲奈は反対を向く。

「ど? どこいくんだ!?」

一人足早に歩き出す玲奈に龍助は慌ててそう聞く。

「トイレ」

玲奈は振り向かず、そのまま歩いていき困惑する龍助を残して女子トイレの中に入っていった。

「玲奈が俺のこと好きって?」

「告白だね♪」

エミィが嬉しそうにそう呟く。

「告白……俺はどうしたらいいんだ?」

龍助はあたふたしながらエミィを見る。

「龍たんの素直な気持ちを伝えればいいの♪」

「素直な気持ち?」

「もー♪ 龍たんが玲奈を好きなのかどうなのか♪」

エミィがやれやれといったジェスチャーをする。

「そりゃ俺も玲奈の事好きだよ?」

「そうじゃない♪」

そう言って再びやれやれとする。

「じゃあどういうことだ!?」

龍助は訳が分からずイライラしたようにそう聞く。

「だめだねぇ♪ 乙女心をちっとも分かっちゃいない♪」

そう言うとエミィは玲奈の入った女子トイレの方へ飛んでいった。
「うえぇぇ……」

「また酔ってる」

「うえー♪」

「真似しない!」

「だめ?」

「ダメ!」

龍助たちは駅に着き、新大坂行きの電車に乗っていた。

「でんしゃめぇ強すぎる……」

龍助は両腕を組み、目をつむって電車酔いと戦っている。

「こんなんじゃ新幹線もダメなのかな」

「だからしんかんせんってなんだ?ぁええう……」

「うーん、電車がもっと速くなるの」

「こいつよりも!? おおぅ……」

一瞬目を開いた龍助だったがすぐに下を向いてしまった。

「あちゃー♪」

そんな玲奈たちのところへ茶髪と金髪の若者が近寄ってきた。

「姉ちゃん今からお出かけ?」

「なぁ俺らと遊ばない?」

玲奈の前に立ち、話しかけてくる若者二人。

玲奈は周りを見るがどうやら自分たちのほかにこの車両には人がいないようだ。

時刻は8時近くで郊外から中心に向かう電車の中。

人が少ないのは当たり前か……

「遊びません…」

玲奈はそう言って下を向いた。

「お? ガードの固い姉ちゃんだ」

「なぁなぁそんなこと言わずにさぁ」

玲奈に触れようと伸ばした若者の手を龍助が掴む。

「お…い…おま…うぅぅ……」

龍助は途中で耐えれなくなり、下を向く。

「なんだ? お前? この可愛い子のツレか?」

「じゃーま」

そう言って一人が龍助の胸倉を掴んだ。

苦しそうに息を吐く龍助はかろうじてその若者を睨みつける。

「玲奈…に…手出すな……」

「じゃまだって」

そう言って若者が龍助を跳ね飛ばし、龍助は床を転がった。

「ねぇ? いいでしょ?」

若者の手がついに玲奈の髪に触れる。

「ひっ……」

玲奈はおびえきっていて動くこともできない。

その横ではエミィが二人の若者を睨んでいるが、全く二人には見えない。

若者の手が肩へとスライドする。

その手を再び龍助が掴んだ。

「玲奈にさわんな!!」

必死に立ち上がり男の腕を握り締める。

「なに?」

若者の一人が龍助の首を掴み、そのまま床に叩きつけた。

「てめぇら」

そしてそのまま背中を踏みつけられる龍助。

(り、龍助? たすけて……)



駅につき電車が止まった。



(うっ…ん?止まった…)

電車が止まったと同時に龍助の体に力が入る。

「誰も来やしないよ」

「来たって無駄だけどな」

若者の手がついに胸の方へと動き出した。

龍助を踏みつけていた方の若者が中に浮く。

「えっ!?」

若者自身も何が起きているのか分からないようだ。

龍助が跳び上がり、体勢を戻すと踏んでいた方の若者の軸足をすくったのだ。

「玲奈に触るなっつただろうが!!」



すさまじい殺気が車両全体を包み込む。



これまでの龍助のへらへらした感じからはとても想像できないほどである。

(龍助? 炎?)

玲奈の目にはぼんやりとだが龍助を包むように炎が揺らいでいるのが見えた。

龍助が再び若者の手を掴むと玲奈から引き剥がし、バランスを崩した若者の腹へ蹴りを入れる。

若者は勢いで飛び、そのまま反対側のシートの上へ落ちた。

「ひっ?」

最初にバランスを崩した方の若者がそれを見て青ざめる。

そして首をつかまれ、持ち上げられた。

「二度と玲奈に近寄んな!!」

龍助は若者にそう言うと倒れているもう一人の若者の方へその若者を投げた。



それと同時に電車が駅を発ち、動き出す。



「うっ!?」

龍助は気分が悪くなり、その場にうずくまった。

「違う車両に行こ……」

涙目の玲奈は龍助を立ち上がらせ支える。

「お、おおうぅ……」

さっきまでの殺気など感じさせないほど弱っている龍助。

(やっぱり龍助かっこいいな……ちょっと怖いくらいだったけど)

「龍たんつよーい♪」

「そうか? うぉおうぅ……」

玲奈は龍助に肩を貸しながら隣の車両まで歩いた。
「私わぁ?」

エミィが頬を膨らませ、龍助の額に突進する。

「あっ! 忘れてた!」

龍助はそう答えて笑う。

「ひどぉおい♪」

エミィがぷんすか怒って龍助のおでこを蹴っていた。



(ちょっと……なんで今、私……ドキドキしてんの?)

そんな横で玲奈は自分の異変を不思議に思っていた。

(ただ龍助と一緒にいるだけなのに……まさか?ううん、そんなはずない)



「おだいばーって遠いのか?」

「お台場は新幹線ってやつに乗らないといけないよ♪」

龍助とエミィはそんなことに気づかずに話を進める。



(龍助が来て1日とちょっと……私が寂しい時に近くにいただけ)



「進化んせん? んせんが進化したのか?」

「そんな訳ないじゃん♪ んせんって何?」

龍助の的外れな返答に笑うエミィ。



(でも龍助は私のことに本気で怒ってた……何でだろう? でもそれだけだよね)



「知らねぇよ! 何だよしんかんせんって!」

「龍たんのお馬鹿ちゃん♪」



(てか隼って私のことそんな風に考えてたんだ……なんかそう考えると無性に腹が立ってくるな……冷めた女って)



「玲奈?」

龍助は玲奈の様子がおかしいことに気がついて顔を覗き込む。

「どうせ私は可愛くないわよ!」

玲奈が突然そう叫んだ。

「へっ?」

「ほへっ?」

突然玲奈が怒り出したことに対し、驚く龍助とエミィ。

「……え?」

そこで心の声が出てしまっていたことに初めて気づく玲奈。

玲奈の顔が赤くなっていく。

「可愛くない?」

龍助が自分が悪いことをしたのではないかと慌てている。

「いやいやいや…なんでもないなんでもない」

玲奈が慌ててそう弁解すると龍助は安心したのかほっと胸をなでおろしていた。

「びっくりしたぁ♪ 突然、私は可愛くないわよ! とか怒るんだから♪」

玲奈の頭の上に座り、玲奈のまねをするエミィ。

「うう、ごめん。びっくりさせちゃったね」

玲奈が恥ずかしそうにそう答える。

「え? 玲奈可愛いぞ?」

「へっ?」

龍助の不意打ちに変な声を出す玲奈。

龍助は何言ってんだ?といった表情で玲奈を見つめている。

「玲奈は可愛いし、優しいし、すげぇいい奴だ。」

(ええええええええええ!? 何? 何!?)

玲奈の顔がいっそう赤くなり、心臓が大きく脈打つ。



(私、完全にこいつのことが好きになっちゃったのかも!!)



「わぁ♪告白だぁ♪」

エミィがそう言ってひゅーひゅーとちゃかす。

「こ、こくはく?」

それが玲奈にさらに追い討ちをかけていた。

「なんだ? 告白?」

龍助は意味を理解していないようでエミィに聞く。

「好きだって伝えるロマンチックなこと♪」

「おう! そういうことか!」

龍助はなるほど!と手を叩いていた。



「私のこと好きなの?」

玲奈は立ち止まりそう呟いた。



(何、変なこと聞いてんのよ私!!)



龍助も驚いた表情をして止まる。

「好きだよ?」

龍助は満面な笑みでそう答える。



(ええええええええええ!?)



「だって服も買ってくれたし、飯も食わせてくれたし、何でも助けてくれるじゃん」

龍助は嬉しそうにそう話していく。

しかしそれを聞いて玲奈はある確信を持った。

(あぁ、要するに恋とかじゃなくて便利なやつってことか……って何がっかりしてんの私!)

玲奈はもはや自分が自分で分からなくなっていた。