私は会社の部門統合を機に

生まれ育った街から離れた。





私はずっと生まれ育った街から出たかった。田舎では無かったけれど、大都会への憧れがあったからだ。





私の親も

私自身も考えが古くて保守的だった。





その当時は、大学も就職も地元だという固定観念を疑わずに生きていた。






結局、結婚を機に生まれ育った街よりさびれた田舎に暮らすことになったのは、皮肉な話だけれど。






生まれ育った街に、まだ住んでいる幼馴染がいる。






彼女は実家に暮している。

アラフィフの未婚である。

とても聡明な女性だ。




彼女とはコロナ前には、

帰省の度(年一回)

数人の幼馴染と共に会食をした。





近況を話したり、必ず想い出話をしていた。





皆、充分いい大人で

話す内容は様々で

中には解決も落ちも無いような

混沌の淵を覗き込むような内容もあった。




でも、そのメンバーだと

昔のあの頃の様に

あどけなさを残した、無垢なそんな感情のままでいるかの様な雰囲気になるのだ。




それは

いつも不思議であり、楽しかった。






幼馴染の彼女は、皆と一緒の時は自分の事は多く語らない。






いつ待ち合わせても(休日でも)仕事を終えてから、少し遅れてきていた。






彼女は入社以来、総務課で庶務担当だった。





学校の先生を彷彿させる風貌と、生真面目な性格は、その職務に最適だと私は思っていた。






彼女の会社は、女性が少なく派遣社員も居ない様だ。






女性社員のメンバーは、ここ数年変わらないようだ。






一番下の女性社員が社内結婚し、育休を取得することになった。





その時、彼女は既にアラフォーだった。




彼女に会社は、育休を取得する女性社員の後釜になるように異動の辞令を出した。






彼女は営業部署に異動になったのだ。





彼女は、異動直後に会った際にこう話した。





『未婚のアラフォーは、どの部署に異動させても問題ないって思われているのか、打診さえなかった。


仕事だから異動は仕方ないけれどね。


アラサーの育休取得の女性社員は「家庭に出産に大変で。異動の件、◯◯さんなら大丈夫ですよね。」って明るく言われてしまった…周りの皆も、その育休取得の女性社員を労っていて。



仕事を任せても大丈夫ですよね、って意味かもしれないけれど、未婚のアラフォーには、何も大変なことなんて無いのだから、って意味に聞こえてしまったの。自分でも、よくわからないんだけど…そう、感じたの。』





私は、こう言った。

『その育休取得の女性社員とは、私は上手くいかないというか、苦手かも。聞いただけの立場なんだけどね笑』





『Kyokaは、そう思う?』




『うん。多分嫌い。嫌いって子供だね、私笑』




幼馴染は『子供だね笑』と微笑んだ。






幼馴染は優しくて強い女性だ。

そして、無敵でも無感情でもない

一人の女性だ。





未婚のアラフォー(今はアラフィフ)の幼馴染が異動する部署には、アラフィフの未婚の男性がいた。





幼馴染は、その男性とペアになるのだった。