「非通知着信」
一行だけ 真夜中の携帯画面に光って浮き出た文字。着信した時間は…PM10:00。これは 彼からなのか…私は携帯を閉じて握り締めた。
彼の声を最後に聞いたのはいつだっただろう。もう思い出せない。私の中の彼への思い出は、淀川の河川敷にいつも飛ぶ。そして、春の暖かい風ときらきら光る川面に差すやさしい春らしい柔らかな日差しに。営業中に彼は、ここでよく休憩していたらしい。彼の一番お気に入りの場所。私と二人っきりになった初めての場所。柔らかく繋いだ手のぬくもり。愛おしいすべての思い出が詰まっている場所。
今も変わらない河川敷の風景を電車の窓越しに見ると、幸せだったあの時を思い出して、時折ちくちくと心を乱す。そんな出会いの春が過ぎて秋になり、彼は、私にとっては、とても、とても遠い転勤先が決まったのだ。
秋が過ぎて、冬が過ぎて…季節は巡っていく。
蝉が 引っきりなしに鳴き始めた7月の夕暮れ時、日が西に傾き最後の刹那を残す。全てに黒の影を落とし、くっきりと輪郭を描く光、重たいオレンジ色の光が辺りを 私を包んでいた。けだるい夏の空気が、着信音で一気に変わる。
「元気にしてる?」
懐かしくて 愛しくて 恋しくて 声を聞くだけで私はじわっと涙が浮いた。いつもと変わらないやさしい声。携帯だけが繋ぐ、か細い糸だけが、唯一の頼みだった。
だけど それも8月には終わってしまった。暑い日差しを必死に投げ掛ける日の光と、ビルの屋上に吹き付ける風の中で、私が聞いたのは 冷たい機械音が出す アナウンス「この番号は現在-」
私は 続きを聞かずに携帯を切った。
電波が微かに繋いだ糸すらもその時に切れたのだ。
彼はいつも非通知で電話する。私はそれを知っていた。私は着信番号が解らないのが恐くて 非通知は拒否している。
もし、彼なら?
メッセージの役割を果たした携帯は光を消して暗くなっている。彼かどうかも解らない ましてやリダイヤルすらも出来ないのに。だけど何度も 考える。もし 彼なら? しかし 答えの代わりに何度も浮かぶのは あの日の機械音。そうだった。全てはあの日から、私達は もう完璧に交わることもないのだ。何もかもが終わっている。
ゆっくりと 消去ボタンを押す。
簡単に はかなく消えたメッセージと一緒に 本当にさようなら 大好きだった人。
Produce by すぷろけっと
Thank you my friends
一行だけ 真夜中の携帯画面に光って浮き出た文字。着信した時間は…PM10:00。これは 彼からなのか…私は携帯を閉じて握り締めた。
彼の声を最後に聞いたのはいつだっただろう。もう思い出せない。私の中の彼への思い出は、淀川の河川敷にいつも飛ぶ。そして、春の暖かい風ときらきら光る川面に差すやさしい春らしい柔らかな日差しに。営業中に彼は、ここでよく休憩していたらしい。彼の一番お気に入りの場所。私と二人っきりになった初めての場所。柔らかく繋いだ手のぬくもり。愛おしいすべての思い出が詰まっている場所。
今も変わらない河川敷の風景を電車の窓越しに見ると、幸せだったあの時を思い出して、時折ちくちくと心を乱す。そんな出会いの春が過ぎて秋になり、彼は、私にとっては、とても、とても遠い転勤先が決まったのだ。
秋が過ぎて、冬が過ぎて…季節は巡っていく。
蝉が 引っきりなしに鳴き始めた7月の夕暮れ時、日が西に傾き最後の刹那を残す。全てに黒の影を落とし、くっきりと輪郭を描く光、重たいオレンジ色の光が辺りを 私を包んでいた。けだるい夏の空気が、着信音で一気に変わる。
「元気にしてる?」
懐かしくて 愛しくて 恋しくて 声を聞くだけで私はじわっと涙が浮いた。いつもと変わらないやさしい声。携帯だけが繋ぐ、か細い糸だけが、唯一の頼みだった。
だけど それも8月には終わってしまった。暑い日差しを必死に投げ掛ける日の光と、ビルの屋上に吹き付ける風の中で、私が聞いたのは 冷たい機械音が出す アナウンス「この番号は現在-」
私は 続きを聞かずに携帯を切った。
電波が微かに繋いだ糸すらもその時に切れたのだ。
彼はいつも非通知で電話する。私はそれを知っていた。私は着信番号が解らないのが恐くて 非通知は拒否している。
もし、彼なら?
メッセージの役割を果たした携帯は光を消して暗くなっている。彼かどうかも解らない ましてやリダイヤルすらも出来ないのに。だけど何度も 考える。もし 彼なら? しかし 答えの代わりに何度も浮かぶのは あの日の機械音。そうだった。全てはあの日から、私達は もう完璧に交わることもないのだ。何もかもが終わっている。
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