その日は、とてもよく晴れた日だった。
猫のラルシュが日向でお昼寝していたのも良く覚えてる。僕は、いつもどおり、その横の日陰に座って本を読んでた。

ラルシュがふぅわーとあくびして、伸びをした。僕はそのきらきらした毛並みを横目に、ぬるくなりすぎた紅茶を口にした。チョコレートをお皿に一つ残してたのをラルシュは見つけてため息をついた。
「ねぇ、スコラ、あの時一緒に食べたチョコのこと覚えてる?」
ラルシュはふわりと尻尾を立てて膝に乗って、そのまま丸くなった。僕は、あまり覚えてなくて、うーんという返事だけを返した。ラルシュはそれを無視して、話を続ける。
「ほら、スコラがまだ小さくて、誰かに負けて泣いて帰ってきたの。その時半分こした、あのチョコレートよ」
ふぅとため息を吐いてラルシュは遠くを見るような感じで、うっとりとした口調で言った。
「あのときのチョコレートをまた 食べたいわ・・・私ももう、おばあさんになったみたいで、遠くにいけないのだもの。もう、あのチョコを口に出来るのかわからないのね・・・」
僕はなんとなく、そういうラルシュが可哀想に思ったんだ。ラルシュは確かにもう、おばあさんになっていて、この頃は日向でのんびりしていることが多い。前はすずめも捕まえてみんなに怒られていたのに。

「ねぇ・・・僕がそのチョコを見つけてくるよ。だから元気出してよ、ラルシュ」
僕は本を横に置いて、ラルシュの小さな背中をなでた。細く目を瞑りラルシュはまた眠ったようだった。

次の日、僕は探しに行くことにした。
ラルシュが望んでる、チョコを探しに。


僕の居た町は、チョコレート材料になるナッツが沢山とれる。アーモンドもマカダミアナッツも、揃わないナッツはないけれど、それだけではどこを探していいのか判らない。僕は、市場に行って、一番いいアーモンドを売ってるお店「フール アン」に入った。
お店は、香ばしいアーモンドのローストと暑さでぬるい空気が満たされていた。かごには炒りたてのアーモンドや、まだ炒られていない生のアーモンドに小さく切られてるのや、薄くスライスされたものまで、たくさん置いてあった。
「おや。スコラじゃないの。」アンおばさんは僕を見つけて声をかけてきた。僕は小さく頭を下げた。本当はアンおばさんは苦手だけど、仕方が無い。
「こんにちは、あの、この辺りでとても美味しいチョコレートを探してるんです。」