世界は殺伐としていた。この国は別段飢えているわけでもなんでもないが 何か別な大切な物を急速に失いつつあった。


思いやり。       

道徳。         

倫理。         

そういったところが。  

いきなり他人の物を持っていくのも、壊すのも今は当然なのだ。       

僕の大切にしていた自転車はこうして無くなったんだ。そう気付いた。


悔しさに 納まらない怒りを…僕は持っていき場の無い憤りをこれを見てぶつけたくなった。


   


こんな警告看板が今まで有効だと微塵も思わなかった。せいぜい、「飲んだら 乗るな 乗るなら飲むな」といった、どこにでもある標語みたいなもんだと勝手に思い込んでいた。   

しかし、今日は違った。


がしゃん、ガキュキュ、バリバリ、なんだかゴミ収集にしてはうるさい。   

外に出て見た光景は…


小さなプレスを載せたトラックだった。次々にスクラップと化す自転車。その作業員が手にしてるのは、まごう事無く僕の自転車だった。気付いた僕はとっさに

「や やめろー!!」


と叫んで駆け寄って止めようとしたが無理だった。無残に 一瞬でスクラップになった。何故だ。力なく膝を付いた。小さくなった僕の自転車を見つめた。たくさんの小さな傷、やくざにけんか売られて信じられないくらいのスピードで走ってくれた君。いろんな思い出が走馬灯のように駈けていく。


いきなりこんな別れが来るなんて思いもしなかった。しかし、それより何より。きっ、と僕は業者の男に詰め寄りどなった。


「どうしてくれるだ!!何の権限があるってんだ?ええっ、おいっ!」


静かに業者の男は看板を指差した。


「警告はしました。それを実行しただけです。ここにそんなに大切にされてるものを置くのが悪いのでは?」           

「だからと言ってやりすぎだろう!」


しかし冷たく男は言った。「この警告は有効ですよ。これは知事が置かれたんです、条令により これからはこの看板の元、不必要に邪魔をする自転車なりを粛正すると決まりましたから。規則です。」     冷たい笑みを顔ににじませ 男はまた 粛々と作業を続行した。男の後ろ側からはリアカーを引いたあまたの汚れた男たちが我先にと言わんばかりに押し掛け、小さくなった自転車を次々に詰め込んで運び始めた。

そうなのだ。これは府の財政政策。スクラップを運ばせてホームレスに仕事をやり、格安でまた自転車を作り 僕らに高値で売り付ける。


僕らははめられた歯車の一つになっていたのだ。






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あのね。この看板見てなんか 書かなきゃって脳内の天使がささやいたんだ!


書いたらね 悪魔が中身をどんどん創っていったんだ。なんか終わら無そうだった。止まんなかった。




それから、この写真使った話を、オナ兄さんにバトンとして回す。兄さん、この写真でなんか書いてみて。すぷろけ、軽く課題出してみる、出来るかな?まぁ 軽い気持ちで待ってる。