どこまで書けるかわからないけど、とにかく書いてみようか(笑)

 

 

ジェイ・ギャツビー役れいこちゃん(月城かなとさん)

 

ファンの欲目もあることは重々承知しておりますが、本公演主演2作目かつ研14とは思えない、堂々たるタイトルロールぶりではなかろうか。

 

宝塚は5組あってそれぞれに色合いが違うのが面白いし飽きない。経営陣の戦略だと思うのだけど、その色合いに一番影響を与えるのはやはりトップスター。

今の宝塚で「THE正統派クラシカル男役」を担っているのがれいこちゃんだと思います。

 

それをこの作品で証明しましたね。

端正な顔立ち、バランス良い背丈。しっかりした体躯(←これは衣装の中をかなり工夫されてると思う)。大人の色気と品格があって、重苦しい愛が似合う(笑)

さらに芝居が出来る。声のトーンとセリフの抑揚のコントロールが上手く、歌にもそれを乗せることが出来るのも強み。

 

 

 

ギャツビーという男は、自分で自分にすら嘘をついているようなところがあって、唯一の真実がデイジーに対する愛、という人。

 

まず、嘘の加減が上手い。

例えば登場シーン、素性がよくわからない胡散臭さを持っているけれども、なんだか品もあって堂々と男らしい二枚目だから、どんな噂も信じちゃいそうになる雰囲気がある。

埠頭で、初対面のニックに挨拶を返すところは訝し気なのに、過去の経歴を話すところはスラスラと言い過ぎてちょっと嘘っぽい、でも絶対に嘘だとは言い切れないような妙な説得力がある。

ストーリーを知らない観客なら「この人ってどんな人?主役だからいい人だよね?え、でも、もしかして?」って思っちゃう、絶妙な匙加減。

 

一方、真実部分であるデイジーへの愛情については、ニックに「(向こう岸にいるのは)恋人ですか?」と聞かれて、嘘が付けなくなる。あれだけ堂々としていたはずなのに、急に自信のなさも垣間見える。

そして、銀橋でのデイジーを思う歌とその表情からは、先ほどまでの胡散臭さが完全に消えている。

観客はすっかり「素敵な人だな」と思わされる(笑)

 

さらに5年前のシーンもありますが、ここではピュアな青年の表情や動き、声も少しだけ高めになってるんですよね。

 

この3つ(嘘と真実と過去のギャツビー)がちゃんとひとりの人物として繋がっているのが、れいこちゃんの芝居力だなぁ、と思います。

その後は真実(愛)を選んだがために、嘘が剥がれていき破滅してしまうわけですが、その流れに違和感が無いんですよね。

 

 

 

豪華な1本立て作品なのでケレン味も必要で、それが一番出てるのが1幕のアウトローブルース。

くさいくらい気障な表情と身振り、歌い方も強くためて、芝居というよりショーアップされた段階まで引き上げている。

ここはひとつの型が決まっているような感じがしました。

 

もうひとつの大ナンバーは2幕の神の眼ですが、こちらは型が決まっておらず、日によって感情の振り幅があったように思います。表情が違っていました。

神の眼の直前にある、銀橋でのデイジーとの別れのシーン、そしてニックとのやりとりが日々違っていたので、それによって神の眼も変わっていたように思います。

 

ゴルフ場でデイジーに拒絶され、それでも愛していると言われた時のギャツビーの表情がね・・・たまらなかった。

下手よりの席じゃないと見れないんだけど(苦笑)

それまで必死に、彼女に認められるためだけに文字通り命がけで生きてきたギャツビーにとって、あの一言はデイジーからの「一緒には生きられない」という最後通牒だったのだろうから。

 

そしてその後、ニックに「君は価値のある人間だ」と言われた時の表情は・・・これは上手側の席じゃないと見れないんだけど(苦笑)

ある時は自嘲した様子だったり、強がってるような真顔だったり、泣きそうな笑みだったりして。

れいこちゃんとおだちん(風間柚乃)、という芝居巧者のふたりの生きている芝居に毎回心が震える思いでした。

 

外連味のある男役パフォーマンスと、繊細なお芝居の両方が観られたのはファンとして楽しかったです。

 

 

***************************

以下、Twitterでつぶやいた内容を転記

 

・過去に外部で観た時はギャツビー犬死にやん!って思って後味が悪かったんだけど、なんか今回そう思わなくなってきた。

切ないし虚しいのは変わらないんだけど、ギャツビーは彼なりの一途な人生を全うしたんだなぁ、とれいこちゃんの芝居に思わされるのかな。


・今夜は上手席だったので、最後のニックとの会話でジェイの顔が良く見えた。ニックに「価値がある人間だ」と言われた時の泣きそうな笑顔が目に焼き付いている。誰も(最終的にはデイジーですら)受け入れてくれなかった己のデイジーへの愛を、ニックだけは認めてくれたからか。

ありがとう、おやすみ、僕は海を見に行く

もいつもより涙声に聞こえた。

もしかしたらニックに認められたからラストで抵抗することなくあの選択をするに至ったのかも。自分で自分の愛を昇華させたのかも・・・

 

・最後の「朝日の昇る前に」で背景にブキャナン邸が無いのは、ギャツビーがこだわりを捨てたという意味か?

 

・アイスキャッスルで、シガレットケースとライターを内ポケットから出して、ケースからタバコ1本出して咥えてケース仕舞って、ライターで火をつけて仕舞って、煙を吐く・・・という一連の動作がたまらなく好き!※ちなみに私は嫌煙家(苦笑)

 

・コンペ前のガソリンスタンドでジェイが車から降りるところが良く見える席だったのだけど、脚の動きが男だった。

歩く立つ座るとかじゃなく、普段の舞台ではあまりない動作だと思うのだけど。一瞬たりとも気を抜かない・・・いや染みついているのか。まさにプロフェッショナル。

 

 

参加しています

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村