大好きな「サンタ・エビータ」を作られた石丸さち子さんの作・演出。
夏希さんと共演する前から気になってた上口耕平くんの初主演。
小劇場で出演者ふたりきりの日本作ミュージカル。

気になる要素いっぱいのこの作品を観てきました。
私が観た回は、当日券も売り切れでキャンセル待ちが出ていました。

設定が「男:震災以降絵を描けなくなった画家」と「女:恋人を亡くしたばかりの同性愛者の女優」ということで、ちょっとばかり身構えてたんですが……悲痛なのは最初のシーンだけで、それを全面に打ち出してはいませんでした。

むしろ爽やかで明るくて優しい、そんな男女の出逢いと心の交流がスケッチ的に綴られていきました。
もう少し悲壮感があった方がドラマチックかも?と思うほどに。

でも表面が明るいから悲しみが無い訳じゃない。
爽やかだから悩みが無い訳じゃない。
人間ってそうですよね。

和也のアメリカ滞在の期限切れを前に、少しずつ滲み出てくる違和感や焦燥感。
いつの間にか客席から応援してしまってる。
自分が女だからか、レイチェルに幸せになってもらいたくて和也にイライラする(笑)

でも安易に「この道を選びなさい」とも言えない。
ただこのふたりには後悔して欲しくない……そんな風に思って観ていました。
石丸さんの優しさや人間肯定な部分が今回のエンディングに繋がったのだと思いますが、私は逆の結末でも納得したかもしれないです。

曲がどれも素敵でした。
出演者ふたりは歌も良かったし、AKANEさんは宝塚時代は存じ上げないけどプロポーション抜群でダンスも出来て魅力的。
ふたりの芝居が自然で「お似合いだな」って素直に思える雰囲気がありました。
客席みんながそう思っている空気がありました。
それって計算だけじゃ出来ないと思うし、今このキャストでこの劇場でしか感じられない……舞台演劇を観る醍醐味。

完璧に完成された作品では決して無いけど、作り手も演じ手も、そして観る側も熱量のある心地よい作品でした。