本日師走の28日、御用納め。


この日になると、ぶどうさんの実家で必ず行っていた行事がある。

それは・・・餅つき。


餅つきといえば、杵と臼。

親戚中が集まってエイヤエイヤ(ですっけ?)と景気良く餅を搗く情景が思い浮かぶが、残念ながら親戚が周りにいなかったぶどうさんちではそれはなかった。


そこで登場するのが、機械の餅つき器。

核家族向けのお助け品で、もち米を蒸すところから搗き上げまでをこなしてくれる優れものだ。

これなら場所をとる蒸篭も杵と臼も人手もいらず、少人数でこじんまりと餅つきが出来る。


・・・あ?知ってました?知ってますよね。


なぜにぶどうさんちに餅つき器があったのか。

理由は知らない。

ある年突然父が買ったのだ。


恐らく、餅代を浮かすためだろうと察しはつく。

核家族とはいえ大食漢の男の子のいる家庭だったし、鏡餅だって買えば高い。


昔はもち米を買って餅屋さんに頼むしかなかったし、パック餅なんてなかったし、今のようなお値段でもちは売っていはいなかったし。


40年近く前のある年、テレビで急に餅つき器のコマーシャルが流れ始めた頃だっただろうか。

日頃無口な父は密かに目をつけていたのか、子供達には相談も無く餅つき器を購入した。

そして年末の台所にいきなり登場、それから十数年の間家庭内餅つき大会が細々と続けられることになった。


買ったのは、あの頃流行の家電色である緑色のボディの「東芝のもちっこ」。

かなり初期の品であるため、餅だけしか搗けない。

そして、全自動ではない。

人の手で世話しなきゃならない、少し手のかかる機械だ。


昔ながらの方法で餅を蒸して搗くというのに比べたら圧倒的に簡単便利なのだが、昨今のホームベーカリーに付いている餅つき機能に比べたらかなり初歩的かもしれない。


また、滑らかな餅になるかというとさにあらず。

どこかぶつぶつが残っていて、全然のびず、思い出しただけで唾が出そうな、固い餅だった。


父は、初期投資としてはお金はかかるが充分回収が見込めると思って餅つき器を買ったのだろう。

実際、十数年使ったから元は充分取れているかもしれない。


けれど、子供たちが成長しつぎつぎと家を巣立ってからは正月に家にいる家族が減り、結局買うほうが手っ取り早く安上がりになってしまい家庭内餅つきはやめてしてしまったようだ。


それからまた幾年月・・・

もうもちっこの出番はない。


一体何十年倉庫に放り込まれたままになっているのだろう。


でももし実家に年の瀬にいたとしても、餅つきをしようなんて決して口に出そうとは思わない。

そんなにお餅を食べないし、両親は年を取ってきた故あまり餅をすすめたくない。

なにより、寒い台所で震えながらもちを丸める作業は勘弁してもらいたい。


28日、本日餅つき日和。


日本中で餅をついていることだろう。


ぶどうさんちは、非常用に買っていたパック餅で新年を迎える予定。

かびないし、必要な分食べられるし、手間要らずだし。


パック餅、万歳。


いい世の中になったものである。