地震後生クリームが入手困難になった北国のぶどうさんち付近。
生クリームが夢のように思えた日々には、最終手段の通販で手に入れようかとさえ考えていた。
4月に入りしばらくしてスーパーに入荷されるようになり、ぶどうさんが小躍りして喜んだのはいうまでもない。
並んでいたのは、あまり日持ちのしない添加物の入っていない生クリーム。
流通の関係でか、地震前までとは全く違うメーカーの、今までそこにおいてあったこともない商品だった。
しかし、家でお菓子作りをする人にとってはこのメーカーの商品が普通のスーパーで日常的に手に入るなんてと喜ぶ品。
・・・ただし、大手スーパーよりは設定値段が40円も高かった。
何種類もあるそのメーカーの商品が大量に並んだ姿にうっとりしつつ、この商品を短い期間で売り切れるのだろうかという一抹の不安がよぎった。
目の前に生クリームがあるというあまりの嬉しさにしばらくは続けて購入したものの、観察しているとどうも売れ行きが怪しい。
そう、だって高いんだもの。
植物性といわれる、いわゆるホイップは当初は入荷していないから他の人もそれを買うしかなかったが、地震から時間が経つにつれ徐々に品数が増えそういう商品が入荷され選択肢が増えた。
おまけに日持ちが1週間ほどしかないので、賞味期限間近で売れ残りが目だってきたのだ。
どうなるんだろうとどきどきしながら見守っていたある日。
そのメーカーの商品が叩き売りのお値段で売り切ろうとされていた。
なんと98円。
ちょうどこどもの日の後で、このイベントにあわせてどうやら大量に仕入れていたようだった。
日持ちの悪い商品(賞味期限のこり2日)が余らないように、値段を下げて売り切ろうとしていたようだった。
ぶどうさん、すかさず最後の生クリームをゲットした。
そして思った。
なんで98円で売れるのに、平常価格の設定がよそのお店より高いのかと。
平常価格をもう少し下げれば、もっとどんどん売れるだろうにと。
なにしろその生クリーム、味がいい。
品質もいい。
添加物が入っていないから舌に嫌な味が残らないし。
その後、この生クリームは入荷されなくなった。
取り扱わなくなったのだ。
その代わり、添加物の入った、そして日持ちする生クリームやホイップが並ぶようになった。
ちょっとさびしかった。
しばらくして、たまたま係りの人が商品を並べていたので、つい件の生クリームの入荷予定がないのか聞いてみた。
すると、扱わないことはないけど、このお店への配分の目処がないという答だった。
係りの人は、しかしご親切に「お客様のそういうお声がありましたことをお伝えします」と言ってくれた。
その応対に感謝したが、慌ててその言葉をさえぎることにした。
なぜなら。
日持ちのしない商品で、おそらく高額ゆえ消費者に受けなかった商品を並べてもらっても、そのお店の損害になるだけなのじゃないかと危惧したから。
そのメーカーの生クリームはそのスーパーで買うのは諦めて他所で買うことにしようと思ったが、今度はおいていたはずの他所のスーパーで取り扱わなくなっていた。
なんということ!
かなりがっかりしたが、一方で地震前に取り扱っていたメーカーの品々が入荷されていた。
売れるかどうかわからない商品を置くリスクは、お客さんにとってもリスクだから、お店も安全策を取らないとね。
なかなかこういう商品は豆腐や野菜とは違ってぜいたく品ゆえ、売れ行きは不透明だものね。
なんだかわかったようなわからないようなことを言い聞かせつつ、残念だなあと思わずにいられなかった。
後日。
例のスーパーに行ったら日持ちのいい生クリームやホイップのそばに、例の生クリームが一つだけおいてあった。
賞味期限は1週間残っていた。入ったばかりのようだった。
取り扱うのは1種類だけのようだけど、添加物入りの他のメーカーと競合できる位の安いほうをおいている。
数も数個を目安にしているようだった。
そうそう、日持ちの悪い商品の入荷数はこのバランスよと、入荷担当者の迅速かつうまいやり方にすっかり感服したぶどうであった。
また利用させていただきます。
・・・できればお値段下げてくださいお願いします(ぺこり)