初めて救急医療を利用した。
腰の痛みがこれまでになく長時間続き、座ることはおろか横になることも辛かったこと、熱が1週間続くので持病の内臓疾患由来のものかと疑われたことで、慌てて駆け込んだのだ。
深夜の病院で待っていたのは、夜間受付の人。
歩くのがおぼつかない私に車椅子を持ってきてくれたが、最初に言われたのが
「保険証と預かり金」のことであった。
病院に電話をしたときに聞いてはいたが、家族ではなく処置前の患者に保険証の提示と預かり金をすかさず切り込んできたことに少々ゲンナリ。
踏み倒す者が多いための策、ということだろうか。
その場で保険証と5000円を渡すと、ピン札をわざわざ折り込んでポケットに入れるしぐさが朦朧とした頭に奇妙に
刻み込まれてしまった。
始めに聞いてきた理由は、もしかしたたらカルテに書くIDの取得のためだったのかもしれない。
けれど救急のカルテは、同じ日の朝からの別の科受診時には全く利用されていなかったので、ただの踏み倒し防止だけなのかもしれない。
救急にかかる患者はそれほど悠長な状態で無い人が殆どと思われるが、病院という別社会のせいか選択の連続であった。
救急なのに、なぜか担当は整形外科のみ。
痛みが整形外科的なことか、内科的なことか知りたいというのに、カルテを書くならひとつだけなので、どっちの科か選べという。
整形外科の先生に内科的なことを聞くよりは、整形外科の見地で見てもらったほうがいいかもしれないとカルテは整形外科にした。
しかしこれは。失敗だったかも知れない。
朝から内科を受診した際、カルテが一から始められ、しかも数時間前の救急での説明など一切無かったこととして扱われたのである。
これでは、総合病院の意味も意義も無いではないか。
科が違っても、救急の、しかも同じ日のデータぐらい融通させるべきだ。
救急で1時間半ほどお世話になった後、同じ日の数時間後に再び内科を受診した。
救急の処置のお陰で座ったり歩いたりできるようになっていたので、座る場所が殆ど無い待合室の椅子を捜して転々としながら検査、診察を終えた。
その時間5時間。
もし救急にかからず5時間を病院で過ごさねばならなかったとしたら。
殆ど拷問だっただろう。
病院を出るとき、預かり金の清算をした。
救急でかかったお金は4500円以上。殆ど預かり金と同額であった。
しかし、5時間の拷問を考えれば、それは決して高いものではなかったのかもしれない。