年収を上げるにはどうするべきか グチらぬことの重要性
社会人になってから40年間続く“ラットレース”のごとき果てしなき働き方は辛いものがあります。『僕た..........≪続きを読む≫
社会人になってから40年間続く“ラットレース”のごとき果てしなき働き方は辛いものがあります。『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』(星海社新書)著者の木暮太一さんは、「今の働き方に疑問を持っているのであれば、転職や独立、ワークライフバランスを考えても意味はありません。しんどい働き方は、もっと根本的なところから考え、変えていかないといけないのです」と語ります。
「もっと根本的なところ」は労働者が置かれた状況であり、給料の決まり方や、仕事で得たものをいかに活かすか? という点にあります。これから4回にわたって木暮さんに「お金」「働き方」「幸せな労働者」「キャリアの変更」について話を伺います。第1回目は「どうすれば年収は増えるか?」を聞いてみました。
* * *
年収を上げることを考えるよりも、どうすれば“可処分利益”と“自己内利益”を増やせるか、ということが重要です。刹那的な“お金”を目指してはいけません。給料をすぐにあげようとすれば妙なドツボにはまるので、今すぐ上げようという考えはまずはやめましょう。そのかわり、将来、稼げるような力を今身につけましょう。貯めるべきものはお金ではなく力なのです。
今の若者は給料を貯めて、将来に備えようとしています。でも、これでは稼ぐ力がなくなったらすぐに貯金を切り崩すだけで、いつまでたっても不安な気持ちは消えません。まずは稼ぐための力をつけることが重要です。
たとえば、小売店向け営業をやっている人がいるとしましょう。「この仕事で何の力がつくんですか? 将来どんな役に立つのですか? 私が扱っているこの商品に関してだけ能力がつくんじゃないですか?」とこの方は言います。
まず言いたいのは営業職は、目先のノルマに捉われてはいけないということです。もう少し本質的なことを考えると、「今あなたが扱っているこの商品だけではなく、汎用的な力を身につけなさい」ということです。つまり、何でも売れる人になれ、どこでも通用する人になれ、ということです。
営業をしていると、目先の営業テクニックだったり、現在担当しているクライアントにしか使えないネタがあると思います――たとえば、電話で呼び出すのが好きな課長が相手だった場合、いつでも誰かが行ける体制を組んでおくとか。でも、その課長にしか通用しない工夫や能力を一所懸命身につけるより、地道で今すぐお金にはならなくても、本当に大事なものを身につけることが重要です。
どんな仕事でもそうですけど、営業マンは特に自分の能力をキャッシュに変える力をみにつけるべきです。その商品があるからお金を稼げる、ということではなく、どの商品でも自分がカネを稼げる能力を身につけるべき。どんな商品でもどこの国でも、何語でも売れる力を身につけるのが重要です。
僕は営業について多くは語れませんが、プルデンシャル生命のトップ営業マンの川田修さんという方が言っていたのは、「営業は人との付き合いであり、自分は営業しない」ということです。「営業なのに営業しない?」なんて思われますが、それでも川田さんはプルデンシャルでトップ営業マン。身につけるべきはこういった力だと思うんです。川田さんは「相手の事を考えて、相手にあった商品を見つける」という能力を得たのですね。
それはトークが上手だとか、プレゼンノウハウを磨くことではなく、人に興味を持ったり、人から好かれたりする人材になろうとするべく自分を高めようとしていることにあるのでは。それは必ずしも短期的な営業成績にはつながりません。でも、長期的には彼を慕う顧客が増えてきて、彼は仕事には困らなくなるわけです。最終的に言うと、説教くさくなって申し訳ありませんが、「中身の人間性を高めなさい」ということになるのです。
今は営業をずっとやってきた人の話ですが、大抵こうした話の場合「これまでやってきたことで食っていけなくなったからまったく新しい仕事を始める場合はどうするんだ!?」という疑問を持たれます。
何かを諦めた人はどうなるか――ということですね。ただ、それまでやっていた“何か”を突き詰めてきた、のめりこんできた人は、実は身についているものがあるんです。それがビジネスになるものです。その能力を持っている人にとって、それまでやってきたことは素晴らしい資産になっています。
僕の知り合いにかつて音大に通い、音楽の道に進もうとしていた女性がいます。でも、ある時、音楽の道を諦めるのですね。今何をやっているかというと、ビジネスマン向けのボイストレーニングの先生をやっています。自分がとことんつきつめてきた発声法、声の整え方をビジネスマン向けに転用したのです。
今では、有名なテレビ番組に出ているほどです。彼女は音楽の知識から「信頼される声」がどんなものかも知っています。普通のビジネスマンではそんなノウハウは知らないわけで、長年かけて積み上げてきた「発声法」という軸を「音楽」から「ビジネスマン向け」変えることによって、人から見ると大きな資産になっていた、という話です。
これまで仕事を一所懸命がんばってきた方は、こうした資産が必ずあるはずです。どうすれば自分が積み上げてきたものが、他人から認められるかを評価しなくてはいけません。ただ、それは自分ではなかなか気づかないものなので、誰かと一緒に考えた方がヒントが出ると思います。
たとえば、某企業の宣伝部長がものすごく変わった方がいました。いきなり、電話口で泣いたりするんです。電通や博報堂の担当者の間では、彼にいかに合わせるのが成功の秘訣か、となっていて、対応マニュアルが存在するという説があります。
彼に合わせる能力って、横展開できるものではありませんが、そこに目をつけ、じゃあ、この資産ってのはどこに使えるかを一所懸命考える。冒頭の「電話で呼び出す課長」の件については「この課長の扱いに慣れているだけではダメだ」と言いましたが、これも資産ではあるので、「どこに使えるか」は同様に考える価値はあるでしょう。
よく「今やっていることは無駄」と言う方がいますが、本当は無駄ではないと思います。でも、「無駄ではない」という夢を持たないと無駄になります。何やら禅問答のようになってきましたが、富士フイルムは“作業”が好きな会社でだとよく言われてました。書類の書き方などにやたらと細かいのです。書類をいくらうまく書いてもビジネスにはなりません。これは仕事をしたつもりであり、作業なのです。一所懸命手だけ動かし、作業だけし、仕事をしている気になっています。そして、それを社員は分かっている。それはまだ仕方ないのですがが、『ウチの会社にいてもノウハウはつかない…』と諦めているのですね。その他に実のある“仕事”もあるのに、“こんなのいらない”と捨てています。仕事だから渋々やった結果、身に付いたものは目を向けていないのです。
僕はその後サイバーエージェントに転職しましたが、そこで富士フイルムの経験が活きました。“膨大な業務量を整理してやっていく”、という能力を持った人材は当時のサイバーには少なかったのです。それが評価され、アメーバブックスという事業の責任者を任せてもらうことができました。しかし一方で、富士フイルムで働いている同僚は「ウチの仕事は世間的には無駄だ無駄だ…」と嘆いている。でも、そういっていると本当に無駄になってしまうんですよ。
社会人になってから40年間続く“ラットレース”のごとき果てしなき働き方は辛いものがあります。『僕た..........≪続きを読む≫
社会人になってから40年間続く“ラットレース”のごとき果てしなき働き方は辛いものがあります。『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』(星海社新書)著者の木暮太一さんは、「今の働き方に疑問を持っているのであれば、転職や独立、ワークライフバランスを考えても意味はありません。しんどい働き方は、もっと根本的なところから考え、変えていかないといけないのです」と語ります。
「もっと根本的なところ」は労働者が置かれた状況であり、給料の決まり方や、仕事で得たものをいかに活かすか? という点にあります。これから4回にわたって木暮さんに「お金」「働き方」「幸せな労働者」「キャリアの変更」について話を伺います。第1回目は「どうすれば年収は増えるか?」を聞いてみました。
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年収を上げることを考えるよりも、どうすれば“可処分利益”と“自己内利益”を増やせるか、ということが重要です。刹那的な“お金”を目指してはいけません。給料をすぐにあげようとすれば妙なドツボにはまるので、今すぐ上げようという考えはまずはやめましょう。そのかわり、将来、稼げるような力を今身につけましょう。貯めるべきものはお金ではなく力なのです。
今の若者は給料を貯めて、将来に備えようとしています。でも、これでは稼ぐ力がなくなったらすぐに貯金を切り崩すだけで、いつまでたっても不安な気持ちは消えません。まずは稼ぐための力をつけることが重要です。
たとえば、小売店向け営業をやっている人がいるとしましょう。「この仕事で何の力がつくんですか? 将来どんな役に立つのですか? 私が扱っているこの商品に関してだけ能力がつくんじゃないですか?」とこの方は言います。
まず言いたいのは営業職は、目先のノルマに捉われてはいけないということです。もう少し本質的なことを考えると、「今あなたが扱っているこの商品だけではなく、汎用的な力を身につけなさい」ということです。つまり、何でも売れる人になれ、どこでも通用する人になれ、ということです。
営業をしていると、目先の営業テクニックだったり、現在担当しているクライアントにしか使えないネタがあると思います――たとえば、電話で呼び出すのが好きな課長が相手だった場合、いつでも誰かが行ける体制を組んでおくとか。でも、その課長にしか通用しない工夫や能力を一所懸命身につけるより、地道で今すぐお金にはならなくても、本当に大事なものを身につけることが重要です。
どんな仕事でもそうですけど、営業マンは特に自分の能力をキャッシュに変える力をみにつけるべきです。その商品があるからお金を稼げる、ということではなく、どの商品でも自分がカネを稼げる能力を身につけるべき。どんな商品でもどこの国でも、何語でも売れる力を身につけるのが重要です。
僕は営業について多くは語れませんが、プルデンシャル生命のトップ営業マンの川田修さんという方が言っていたのは、「営業は人との付き合いであり、自分は営業しない」ということです。「営業なのに営業しない?」なんて思われますが、それでも川田さんはプルデンシャルでトップ営業マン。身につけるべきはこういった力だと思うんです。川田さんは「相手の事を考えて、相手にあった商品を見つける」という能力を得たのですね。
それはトークが上手だとか、プレゼンノウハウを磨くことではなく、人に興味を持ったり、人から好かれたりする人材になろうとするべく自分を高めようとしていることにあるのでは。それは必ずしも短期的な営業成績にはつながりません。でも、長期的には彼を慕う顧客が増えてきて、彼は仕事には困らなくなるわけです。最終的に言うと、説教くさくなって申し訳ありませんが、「中身の人間性を高めなさい」ということになるのです。
今は営業をずっとやってきた人の話ですが、大抵こうした話の場合「これまでやってきたことで食っていけなくなったからまったく新しい仕事を始める場合はどうするんだ!?」という疑問を持たれます。
何かを諦めた人はどうなるか――ということですね。ただ、それまでやっていた“何か”を突き詰めてきた、のめりこんできた人は、実は身についているものがあるんです。それがビジネスになるものです。その能力を持っている人にとって、それまでやってきたことは素晴らしい資産になっています。
僕の知り合いにかつて音大に通い、音楽の道に進もうとしていた女性がいます。でも、ある時、音楽の道を諦めるのですね。今何をやっているかというと、ビジネスマン向けのボイストレーニングの先生をやっています。自分がとことんつきつめてきた発声法、声の整え方をビジネスマン向けに転用したのです。
今では、有名なテレビ番組に出ているほどです。彼女は音楽の知識から「信頼される声」がどんなものかも知っています。普通のビジネスマンではそんなノウハウは知らないわけで、長年かけて積み上げてきた「発声法」という軸を「音楽」から「ビジネスマン向け」変えることによって、人から見ると大きな資産になっていた、という話です。
これまで仕事を一所懸命がんばってきた方は、こうした資産が必ずあるはずです。どうすれば自分が積み上げてきたものが、他人から認められるかを評価しなくてはいけません。ただ、それは自分ではなかなか気づかないものなので、誰かと一緒に考えた方がヒントが出ると思います。
たとえば、某企業の宣伝部長がものすごく変わった方がいました。いきなり、電話口で泣いたりするんです。電通や博報堂の担当者の間では、彼にいかに合わせるのが成功の秘訣か、となっていて、対応マニュアルが存在するという説があります。
彼に合わせる能力って、横展開できるものではありませんが、そこに目をつけ、じゃあ、この資産ってのはどこに使えるかを一所懸命考える。冒頭の「電話で呼び出す課長」の件については「この課長の扱いに慣れているだけではダメだ」と言いましたが、これも資産ではあるので、「どこに使えるか」は同様に考える価値はあるでしょう。
よく「今やっていることは無駄」と言う方がいますが、本当は無駄ではないと思います。でも、「無駄ではない」という夢を持たないと無駄になります。何やら禅問答のようになってきましたが、富士フイルムは“作業”が好きな会社でだとよく言われてました。書類の書き方などにやたらと細かいのです。書類をいくらうまく書いてもビジネスにはなりません。これは仕事をしたつもりであり、作業なのです。一所懸命手だけ動かし、作業だけし、仕事をしている気になっています。そして、それを社員は分かっている。それはまだ仕方ないのですがが、『ウチの会社にいてもノウハウはつかない…』と諦めているのですね。その他に実のある“仕事”もあるのに、“こんなのいらない”と捨てています。仕事だから渋々やった結果、身に付いたものは目を向けていないのです。
僕はその後サイバーエージェントに転職しましたが、そこで富士フイルムの経験が活きました。“膨大な業務量を整理してやっていく”、という能力を持った人材は当時のサイバーには少なかったのです。それが評価され、アメーバブックスという事業の責任者を任せてもらうことができました。しかし一方で、富士フイルムで働いている同僚は「ウチの仕事は世間的には無駄だ無駄だ…」と嘆いている。でも、そういっていると本当に無駄になってしまうんですよ。
