花に寄せて~星野富弘 | ~しなやかに生きる~

花に寄せて~星野富弘


明日の朝は遅く起きても大丈夫・・・

と思うと、こうして深夜に何か書いてみようとPCに向かいます



だからって、取り立てて浮ばないのですが

最近は撮った写真もないので、10月に行ったある演奏会から

特に心に残ったことをご紹介してみようと思います




中旬頃だったと思います

・・・今、パンフレットで確認しましたら14日のようです

「福岡合唱協会」の定期演奏会。



幾つかの演目の中で

車椅子の詩人といわれる「星野富弘」さんの詩に

新美徳英さんが曲をつけた、

~混声合唱とピアノのための「花に寄せて」~

が演奏されたのですが、この作品を聴くのは十年ぶりくらいのことでした




星野富弘さんが、中学の教諭としてクラブ活動の指導中に頚髄を損傷、

手足の自由を失い、口に筆をくわえて文や絵を書き始められて40年余り・・・

多くの人がいろんなところでその作品を目にし、

胸が熱くなるような思いと共に、力をいただいた経験をお持ちのことだと思います




私が初めて実際の作品に触れさせていただいたのは

もう遠い日の出来事なので幾分記憶はあやふやなのですが

いつか記事にも書いた、群馬県の高崎市にある

「山田かまち水彩デッサン美術館」が開館してまもない頃そこを訪れた時に、

同じ群馬県内に星野さんの美術館もあると聞き、訪ねたのでした

たしかそうだったと思います

そうでなかったとしたらその後、再度「山田かまち」の美術館に行った時、

そうしたのだと思います


私の中ではこの二人が、そんなことで結ばれています

そして作品が「詩」と「絵」ということでも・・・



ですが、最初にそのお名前と作品を知ったのは

小学校の担任の先生から教えられた時です

驚きました。その時の感動は今でも忘れていません。

絵と字と・・・口に銜えた筆で、人間はこんなことができるのかって・・・






コンデジがまだ修理できていないので(って出してない、笑)

携帯でですが、写真がないのも淋しいので

パンフレットに載せてあったものと(下)

挟んであった「星野富弘美術館(熊本の方)」のチラシ(上)から

今、一部を撮ってみました



これを添えて、今夜は、

「花に寄せて」、の7つの詩と

私の感想をちょっとだけ・・・





~しなやかに生きる~-1






(1) たんぽぽ


いつだったか

きみたちが空をとんで行くのを見たよ

風に吹かれて

ただ一つのものを持って

旅する姿が

 うれしくてならなかったよ

人間だって どうしても必要なものは

ただ一つ

私も 余分なものを捨てれば

空がとべるような気がしたよ



      

         ※自分にとってどうしても必要なもの・・・

          それが何か知ることができただけでも

           幸せなのかもしれませんね





(2) ねこじゃらし


思い出の向う側から

一人の少年が走ってくる

あれは白い運動ぐつを

初めて買ってもらった日の

私かも知れない

白い布に草の汁を飛び散らせながら

あんなにも

   あんなにも嬉しそうに

今に向かって 走ってくる




        ※星野さんの、どんなに辛かっただろうお気持ちが

            滲んでいるような詩ですね

            胸が痛くなる思いがするとともに、人間の素晴らしさを思います





(3) しおん

ほんとうの ことなら

  多くの言葉は

       いらない

野の草が

    風にゆれるように

  小さなしぐさにも

輝きがある


       

        ※この世界では、言葉なしでは伝えられないけれど
            言葉だけではなく伝わるものもあると信じています





(4) つばき・やぶかんぞう・あさがお


木は自分で

動きまわることができない

神様に与えられた その場所で

精一杯 枝を張り

許された高さまで

一生懸命 伸びようとしている

そんな木を

私は友達のように思っている


いつか草が

  風に揺れるのを見て

弱さを思った

今日

  草が風に揺れるのを見て

強さを知った



一本の茎が

一本の棒を登って行く

棒の先には夏の空

私も あんなふうに登って行きたい




        ※気遣い

            思いやり

             寄りそうこと

           自然はいつも自然のままに教えてくれる

           人の生きる道を指し示してくれる





(5) てっせん・どくだみ


花は自分の美しさを

知らないから

美しいのだろうか

知っているから

美しく咲けるのだろうか


おまえを大切に

摘んでゆく人がいた

臭いといわれ

きらわれ者のおまえだったけれど

道の隅で

歩く人の足許を見上げ

ひっそりと生きていた

いつかおまえを必要とする人が

現われるのを待っていたかのように

お前の花

白い十字架に似ていた



         

         ※私は、家の庭から完全駆除が難しい

           どくだみの匂いが好き。姿も好き。

           ジレンマに苛まれる。





~しなやかに生きる~-2







(6) みょうが


畑の草を一日中むしり

かいこに桑をくれ

夕方 ひょいっと出かけてみょうがをとり

それを売っては

弁当のおかずを買って来てくれたっけねえ

 いつもしょっぱい こぶのつくだ煮

花の咲いたやつは安くなるからと

花を抜いて売ったことも あったよね

もんぺと地下たびの間は

蚊にさされた跡がいっぱいだった

かあちゃん

みょうがを食うとばかになるというけれど

おれは

思い出すことばっかりです




        ※みょうがの匂いも大好き。

            あの独特の鮮烈な香り、食卓に並ぶととても幸せになります。

            子の立場で、親の立場で、涙が込み上げてきそうになるけれど。





(7) ばら・きく・なずな


淡い花は

母の色をしている

弱さと悲しみが

      混じりあった

温かな

母の色をしている



母の手は

   菊の花に似ている

固く握りしめ

それでいてやわらかな

母の手は

   菊の花に似ている



神様が たった一度だけ

この腕を 動かして下さるとしたら

母の肩を たたかせてもらおう

風に揺れる

ぺんぺん草の実を見ていたら

そんな日が

本当に来るような気がした




        ※魂の絆はきっと 

            永遠なんだと思います

            いつかそんな日が

            来るんだと思います






       詩は、立風書房刊「四季抄 風の旅」による