春に | ~しなやかに生きる~

春に

中学生のレッスン生の中には

学校でのクラス合唱の伴奏を引き受け

ついでに持ってくる子どもたちがいます。


ソロ演奏と伴奏というのは根本的に違いがあり、

良い機会なので 私の方からも 

遠慮なく持ってくるように言ってあります。


この辺の合唱曲というのは

普段 特別な機会がない限り

あまり耳にすることはないかもしれませんが、


実に壮大で繊細で 美しい曲が数多くあります。


ポピュラーなものをあげれば

   大地讃頌」

若い方たちは一度は歌った経験があるでしょう。


この中学生対象のコーラス集をみれば

この頃(青春?すでに死語?)の

エネルギーを織り込んだような

素晴らしい胸を打つ歌詞が、

ページに並んでいるのです。


良く歌われている曲の一つで

私が最も好きな 谷川俊太郎

の詩を載せてみます。



           春に


    この気もちはなんだろう

    目に見えないエネルギーの流れが

    大地からあしのうらを伝わって

    ぼくの腹へ胸へそしてのどへ

    声にならないさけびとなって

    こみあげる


    この気もちはなんだろう

    枝の先のふくらんだ新芽が

    心をつつく

    よろこびだ

    しかしかなしみでもある

    いらだちだ

    しかもやすらぎがある

    あこがれだ

    そしていかりがかくれている

    心のダムにせきとめられ

    よどみ渦まきせめぎあい

    いまあふれようとする


    この気もちはなんだろう

    あの空のあの青に手をひたしたい

    まだ会ったことのない

    すべての人と

    会ってみたい話してみたい

    あしたとあさってが

    一度にくるといい

    ぼくはもどかしい

    地平線のかなたへと歩きつづけたい

    そのくせ

    この草の上でじっとしていたい

    大声でだれかを呼びたい

    そのくせひとりで黙っていたい

    この気もちはなんだろう



       ・・・これに また私の尊敬する

     木下牧子さんの曲がついています。




今 当教室のR君がこれを練習しています。

すでにショパンのエチュードをこなせる彼には

たやすいことなのですが、

私が一緒に歌いたいために弾いてもらっている、

という感じで レッスンの最後に必ず二人で

演奏することにしています。


このタッキーの風貌を思わせる

利発で心優しい少年のこれからの大船出を

この歌に重ね合わせて思う時、


なんだかとても いとおしくて

胸がつまってしまいます。



  R君・・・君の話に時々出てくる


  クラスで一番嫌いだという女の子、

  

  どう考え直してみても 先生には


  うらやましいとしか


  思えないんだけどナぁ~