2005年11月に刊行された、アフタヌーン連載作品「アンダーカレント」です。初の単行本でしたが、事前の評判が非常に高い作品だった思い出があります。期待通りの動きを見せてくれた作品でした。



舞台がお風呂屋さんというのが、なかなか面白い。夫が忽然と蒸発してしまったものの、いつまでも店を閉めておくわけにもいかないので、営業再開に踏み切ったシーンから、物語はスタートする。主人公の女性の現在と過去、そして様々な人間がゆっくりと絡み合って、物語は進んでいく。



静かな描写の中で、非常に強い精神の動きを見せつける表現が、この作品の魅力だと思います。といっても淡々としているわけではなく、どの人物も非常に印象的に描かれていて、読み応えは抜群。ほっとするユーモアや日常のドタバタも随所に散りばめられますが、それがいっそう「主人公が不安定であること」を見せつけている気もします。



混乱しているときの方が、ドタバタ感を楽しめるような気もしますし。この作品は、喜びも悲しみも、何か反対のことを表現している気がするんですよね。言葉にするのは難しいのですが、今回、久しぶりに読み直しても、当時読んだときと同じような気持ちになりました。



と・・・まとまりのない書評で申し訳ございません。この作品、好きですよ。人物の表情がとても好き。もっと時間経てば、また違った感想持てるかな。読んでみてほしいです。豊田先生は、現在アフタヌーンにて「珈琲時間」を連載中です。単行本が待ち遠しいですね。