親子で音楽に向き合う時間は、本来とても豊かなもの

ピアノをはじめとする音楽を通して、 親子で一緒に取り組むこと自体は、決して悪いことではありません。

私自身も、親子で音楽に向き合うことで、 練習の様子や発表会の話題、好きな曲の共有など、 家庭に“共通言語”が生まれました。

こうした日々の積み重ねは家族の物語となり、 親子の絆をゆっくり深めてくれます。

子どもにとっても、 練習 → 上達 → 発表 → コンクール という流れが成功体験となり、 「やればできる」という感覚が育っていきます。

親は子どもの気分や集中力、得意・不得意を細かく感じ取れるようになり、 寄り添い方が自然と上手になる。

息子が音楽と出会ったことは、 私にとって本当に“大成功”だったと思っています。

 

 

 

 

ただ、結果に気持ちが振り回されるときがある

親子で音楽に向き合う時間は大切ですが、 コンクールの結果に心が大きく揺れると、 つい過干渉になってしまうことがあります。

本来は楽しいはずの音楽が、 他人の評価を気にして右往左往する“評価軸の迷子”になることも。

「もっといけるんじゃないか」 「この子には才能があるのでは」 そんなふうに夢がどんどん膨らんでいく。

でも、子どもが成長していくにつれ、 私の心には、ある“恐れ”が静かに芽生えていきました。

 

 

 

 

 

私が最も恐れていたこと

それは──

精一杯頑張った。 でも、結果は思うようにいかなかった。

そのとき、もし息子が 「新卒というプラチナカード」を失ってしまったら。

もちろん、 新卒だけが幸せの形ではありません。 

人生にはいろいろな道があり、 遠回りが成功につながることもたくさんあります。

ただ、息子が「音楽高校」と記入した時は嬉しかったけれど、やはりもう一つの気持ちとしては、親としての私は── 「夢に全力でかけてみなさい!」 と背中を押し切る勇気は、どうしても出せませんでした。

なぜなら、 夢を追うことと、人生の選択肢を残すことは、両立してほしかったから。

新卒というカードは、 いわゆる「大手企業」や「人気企業」など、息子の未来の生活基盤の選択肢を広げる“通過地点”として、どうしても守ってあげたいと思っていたのです。

 

 

 

 

 

親としての願いは、とてもシンプル

音楽で培ったことは必ず人生に役立つ」 これは本当にその通りだと思います。

ただ、21歳という時期は必ず訪れます。 その時に、息子自身がしっかりとした“人生の軸”を持っていてほしい。

夢を追うことも大事。 でも、選択肢を残すことも同じくらい大事。

私はただ、 息子が自分の人生を自分の足で歩けるように── そう願っていました。