なぜ猫は他の動物よりも新型コロナに感染しやすいのか

ウイルスの宿主細胞

ウイルスは自己複製できませんので、細胞に感染して細胞内に入り込み、細胞のエネルギーを使い、代謝系を利用してウイルスの構成成分を複製します。

肺炎を引き起こす新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) は主に咽頭や肺の細胞を宿主細胞にして増殖すると考えられています。

フェレットの研究から

フェレットに新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を鼻腔内接種した後、研究者らはこのウイルスが「重篤な疾患や死を引き起こすこと無く、フェレットの上気道で3〜8日間増殖する。」ことを発見しました。さらに「ウイルスは消化管で複製する可能性があるが、肺葉では複製しない。」と付け加えました。

クシャミしそうな猫

その後研究者たちは、猫と犬に目を向けました。6〜9ヵ月齢の猫にウイルスを鼻腔内接種し、呼吸器の飛沫感染を監視するために、感染していない猫の入ったケージを感染した3匹の猫の入ったケージの隣に設置しました。その後、猫の糞と、臓器内のウイルスRNA (リボ核酸)をチェックしました。

そしてウイルスを接種された猫と、ウイルスRNA陽性の糞便に曝された猫の両方の軟口蓋と扁桃にウイルスRNAを発見しました。

暴露された猫はまた、鼻甲介 (鼻の中のひだ) と気管にもウイルスRNAがあり、「これらの猫間で呼吸飛沫感染が起こったことを示している」としています。

そして、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は猫で効率的に複製でき、若い猫の方が、細胞がウイルス複製に対して代謝産物を供給できる状態が高く、おそらくより重要な事は、ウイルスは猫間で飛沫感染する可能性があるということです」と結論づけています。

 

ビーグルの子犬たち

犬に対する調査では、ウイルスを鼻腔内接種された3ヵ月齢のビーグル犬5匹、接種していないビーグル犬2匹を一緒にしました。

ウイルスRNAが、ウイルスを接種された犬の中で2日目に2匹、6日目に1匹、直腸綿棒を用いて検出されたものの「これらの犬から採取された綿棒からは、感染力のあるウイルスは検出されなかった」と述べています。

14日目に、研究者はすべての犬から血清を収集しました。

ウイルスを接種した内の2匹の犬はセロコンバージョン (抗体が血清中に検出可能になる) しましたが、残る3匹の犬とウイルスにさらされた2匹の犬はすべてSARS-CoV-2に対して血清反応陰性であり、ウイルスに対する「感受性が低い」ことを示しています。

その他の動物

ブタ、ニワトリ、アヒルで同様の研究が行われ、ウイルスが接種された動物や、曝露された動物においてウイルスRNAは検出されなかったとのことです。

アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)

いくつかの研究では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)がアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を受容体として細胞に侵入することが報告されています。

ACE2は主にフェレットの気管気管支粘膜下腺のII型肺細胞と漿液性上皮細胞に存在しています。フェレットと猫は、ACE2のSARS-CoV-2スパイク接触領域においてのアミノ酸の違いは2つだけ、構造的に似ていると言えるでしょう。 (残りは同じ)。

まとめ

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)がフェレットの上気道で効率的に複製するという事実が、ACE2のSARS-CoV-2スパイク接触領域のアミノ酸の違いが2つだけである猫にも共通しているということと、その他の研究結果から猫とフェレットは他の動物よりもSARS-CoV-2ウイルスの影響を受けやすいということのようです。

ワクチンや薬が開発されるまでは、引き続き感染対策を徹底することが重要となります。

《参考》
Medpage today『The Truth About Cats, Dogs, and COVID-19』
science『Susceptibility of ferrets, cats, dogs, and other domesticated animals to SARS–coronavirus 2』
Modia『【バイオのプロが解説】ウイルスとは?-生き物との違いとコロナウイルスの増殖機構-』


文:m&m