政治とメタルと網膜剥離 -6ページ目

日立会長のやや間抜けな「明日への話題」

今日の日経夕刊3面に、

「日立、テレビ事業再編発表 自社生産今秋に終了」

という見出しがある。内容は、表題の如しだが、日経らしく、企業側に配慮した回りくどい言い回しとなっている。


これが毎日新聞の記事だと以下のようになる。こちらの方が実態を反映しているのだろう。


「日立製作所:テレビの自社生産 今年9月までに撤退へ」

(引用始め)

「日立製作所は23日、1956年から続けてきたテレビの自社生産について、今年9月末までに撤退すると発表した。価格下落などに伴う赤字解消のめどが立たないためで、生産を台湾や韓国など海外メーカーに全面的に外部委託することでコストを削減、収益構造を立て直す。開発や販売などのテレビ事業は続け、日立ブランドは維持する。

 日立によると、薄型テレビの製造などを手がける子会社「日立コンシューマエレクトロニクス(CE)」のテレビ事業を9月末までに、家電全般の販売を扱う子会社「日立コンシューマ・マーケティング(CM)」に移管。日立CEは映像技術の開発は続け、日立CMが販売するテレビに応用する。日立CMは日立グループ内外から効率的に部材を調達して組み立てたテレビの販売を続ける。また、現在、テレビを製造している子会社の岐阜工場は映像機器関連製品などの生産を継続し、約250人の雇用は維持する方針。

 日立のテレビ事業は11年3月期まで6期連続の赤字を記録。07年度以降、海外の自社の生産拠点を撤退して韓国などの外部委託の比率を上げ、現在までに自社生産は岐阜工場だけとなっていた。12年度には売上高を現在の半分程度の600億円まで縮小し、徹底したコスト削減で赤字解消を目指す。」(引用終わり)


このような記事が掲載された日経夕刊1面の「明日への話題」欄には、日立会長の川村隆氏のエッセイのようなものが掲載 されている。


「毎日7千歩を歩くのを目標にしているが、毎日達成するのは困難なことが多い。実際は1週間に5万歩ということにして、休日の散歩やゴルフなどで歩数稼ぎをしながら、何とか達成している。最大の障害は、社用車での送り迎えである。歩数が足りない週は、行き帰りの途中で車を降りて補っている。妻は「歩数計の奴隷みたい」と冷やかすし、運転手からも迷惑がられる。 それでも歩くのは、冬にスキーをやりたいためである。札幌で育ち・・・・

(中略)

強張った筋肉をほぐしながら、露天風呂など楽しめればよい言うことはない。にごり湯の硫黄泉などを好んでいる。(以下略)」


念のため言っておくと、日立のそれも会長が社用車を使うのは当然である。秘書が同乗してスケジュール調整をしたり、次の会議に備えて事前資料を読み込んだり、急ぎの際には部下が同乗して説明したり、と大企業の上級役員であれば、当然使って然るべきである。


ただ、今回の川村氏のエッセイは、紙面をめくった先に自社のシビアな現実が記されていることがある意味不運だった。栄光ある(はずだった)日立のテレビ事業が、少なくとも国内生産という点では姿を消す。日立の歴史的にも厳しい一ページが刻まれた記事の表紙が、このエッセイである。自社の厳しいニュースが流れる中、社用車の送り迎えが最大の障害などと語るこのエッセイのしまりの無さは余りに対照的である。救いは国内従業員の雇用が維持される、ということで、これが全員解雇などとなっていたらネット上で「祭り」が始まっただろう。


また、日立は原子力発電事業で東芝、三菱重工業に次ぐ一大勢力でもある。日立のホームページによると、福島第一の1号機、4号機にも主要設備を納入したとある。 今回の事故において、日立の責任は本当に無いのかもしれないが、知らん振りして能天気でいられるほど薄い関わりではない。ちなみにこのエッセイの上部には、東電のリストラの記事がある。


川村氏のエッセイも、先週の青函連絡船に関するものなどはそれなりに味わい深いものだった。しかしよりによって、自社のこのようなニュースが流れた紙面に、能天気で出来の悪いエッセイが載る。経営者は自社のため、従業員のためにも、ただ自分が楽しかったことなどを万民に向かって垂れ流すような振舞うことは許されないのである。