エリザベス・キューブラー・ロス博士は、
生涯を通じて「生と死」に深いまなざしを注いだ精神科医です。
死をテーマにして世界各地で多くの講演を行い、
終末医療のパイオニア的存在といわれています。


彼女は多くの著作を残していますが、
その中でも、心に響いた3冊について
紹介したいと思います。


『ライフ・レッスン』上野圭一訳 角川文庫

『死ぬ瞬間』川口正吉訳 中公文庫 

『人生は廻る輪のように』上野圭一訳 角川文庫 



『ライフ・レッスン』


人生の中で起こる苦難をどう受け止め、対処し、
さらに心を成長させていくか。


博士と共著者が、患者を診る中で見つけた、
人生で学ぶレッスンがわかりやすく書かれています。
各レッスンごとに1章になっていて、読みやすいです。


「ほんものの自己」のレッスン;愛のレッスン;人間関係のレッスン;喪失のレッスン
 力のレッスン;罪悪感のレッスン;時間のレッスン;恐れのレッスン;怒りのレッスン
 遊びのレッスン;明け渡しのレッスン;許しのレッスン;幸福のレッスン


「自分を幸福にするために必要なものはすべてあたえられている。
 わたしたちはただ、自分にあたえられているものの使い方を知らないだけなのだ。」


含蓄のある言葉が多く、自分自身について考えさせられます。
同時に、ざわつく心を安らかにしてくれる、素晴らしい本でした。
3冊の中で一番好きなのは、生をテーマにしているからかもしれません。




『死ぬ瞬間』


怖すぎるタイトルですが、ロス博士の著作の中では最も有名です。
特に、この中で紹介されている「受容の5段階」は、
医学生や看護学生が授業で学ぶほど、広く知られています。


「受容の5段階」


否認
自分が死ぬということは嘘ではないのかと疑う段階

怒り
なぜ自分が死ななければならないのかという怒りを周囲に向ける段階

取引
なんとか死なずにすむように取引をしようと試みる段階

抑うつ
なにもできなくなる段階

受容
最終的に自分が死に行くことを受け入れる段階


この「受容の5段階」は死を受け入れるまでの段階とのことですが、
すべての喪失の経験にに適用できる癒しのプロセスです。


各段階の長さには個人によって異なるし、
重なることも後戻りすることもあります。

(ちなみに私は今、抑うつかもしれません。。)

心の準備ができたとき、自然な感情がわいてきて、
受容へのプロセスが進んでいきます。




『人生は廻る輪のように』


ロス博士の自伝的著作です。
医学の道に進み、家族や友人を失いながらも
自分の道を歩んでいった女性の記録です。


最後の数ページに、彼女の人生の集大成ともいえる文章があります。
心に響いたところを抜粋しました。


「わたしのこころはあとに残していく人たちに向けられている。


人生に起こるすべての苦難、すべての悪夢、
神がくだした罰のようにみえるすべての試練は、
実際には神からの贈り物である。
それらは成長の機会であり、成長こそがいのちのただひとつの目的なのだ。
 
自然に死ぬまで生きなければならない。
ひとりで死んでいく人はいない。


だれもが想像をこえるほど大きなものに愛されている。
だれもが祝福され、みちびかれている。


人は自分がしたいと思うことしかしない。
それを知ることが重要だ。
たとえ貧しくても、飢えていても、粗末な家に住んでいても、
十全に生きることはできる。


いちばんむずかしいのは無条件の愛を身につけることだ。
死は怖くない。死は人生でもっともすばらしい経験にもなりうる。
そうなるかどうかは、その人がどう生きたかにかかっている。


愛があれば、どんなことにも耐えられる。
どうかもっと多くの人に、もっと多くの愛をあたえようとこころがけてほしい。
永遠に生きるのは愛だけなのだから。」


自分の体が辛い時に、人に愛をあたえようとするのは
とても難しいことですが、できる範囲で(←弱気?)頑張りたいものです。