琥珀というのは、あたたかい感じがする。
ブランデーやウィスキーを思わせる、落ち着いたこっくりとした色合い。
一粒一粒が不揃いで、それぞれが何かを語っているみたいだ。
琥珀が、『愛を咲かせる宝石』『愛を願う女神の涙』といわれることを知った。

琥珀は、アンデルセンの生まれたデンマークの国の宝石であるらしい。
「人魚姫」のお話は、女神ユーラテの伝説をモデルに創作されたという。

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その昔、海の女神ユーラテは、自分の海を荒らす漁師に魚を獲るのをやめるよう姿を現すが、逞しい漁師の姿に魅せられて恋をしてしまう。

恋に落ちた女神は漁師を自分の海底神殿へと誘い入れ、二人は幸せな時を過ごす。
やがて、人間と女神の恋は噂となり、それを知った最高神は怒って、雷で漁師を海底に沈めてしまう。

それ以来、バルト海沿岸の白い砂浜に琥珀が打ち上げられ、
人々は琥珀を『愛を願う女神の涙』と信じるようになったという。

また、地域に残る人魚伝説から、『人魚の涙』とも言われ、
愛を咲かせる石、護身の石として大切に身につけられてきたそうだ。

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琥珀は、針葉樹の樹脂が化石化して生まれ変わった唯一の生物起源宝石だという。
とても稀な成分の樹脂が川から海へと流され、浅瀬に堆積したのち、海底で数年万年という時を経て生まれ変わった植物から生まれた奇跡の宝石と言われる。


琥珀のネックレスは、昔、ロシアの土産に、伯父が母に買ってきたものだ。
今は、私のものとなった。
『女神の涙』だと知ったら、一粒一粒が何か話したそうに揺れる気がした。

人魚と漁師の儚い恋のお話。

海底で過ごした長い年月に、何を思っていたのだろう、なんて考える。
愛を願う女神の涙。

温かい色や素材と組み合わせるのが好きだ。
愛を願う『女神の涙』を身につけていると思うと、振る舞いも優しくなるかしら。