原子力発電所の周囲には全く明かりが見えなかった。非常用の電源も作動していない。先を走っていた陸軍の車両が駐車場に着き、ライトを点灯したまま、バスの到着を待った。もしそのライトがなければ、駐車場の位置すら見えなかっただろう。

 

 陸軍の隊員が防護服を用意して、バスに近づいてきた。橋本がバスを降り応対するが、防護服は2着しか用意されていなかった。

 

 「申し訳ありませんが、2着しかご用意できません。残りの方はバスの中で待機して頂くようお願いします。」隊員は、申し訳なさそうに、謝りながら防護服を手渡そうとした。

 

 「いいえ、防護服は1着で大丈夫です。彼らはもう準備できていますので。」

 

 橋本がそう言って、バスの方を振り返って見せた。すると、ヒューマノイドたちは全員が防護服をすでに装着していた。

 

 「えっ、どうしてご用意できたのですか?」隊員は、橋本の用意の良さに驚いて尋ねたが、橋本はただ笑っているだけで、答えはしなかった。

 

 「さあ、発電所の中へ行きましょう。」橋本は、ヒューマノイドたちを従えて発電所へ向かった。

 

 

 原子力発電所の中にも、明かりはなく、ヒューマノイドたちはヘッドライトを点灯させて進んだ。発電所の職員が、電源室を案内し状況を説明するのだが、既にヒューマノイドたちは、10名ずつに分かれて、それぞれの作業に向かっていた。

 

 「どうやら、ここには白アリがいるようですね。」橋本が、そんなことを言うので、原子力発電所の職員は「そんなはずはありません。ここには木材は何もありませんので、白アリがいるはずがない。」と、少し怒ったように反発をした。

 

 だが、橋本は構わずに「ここですよ、白アリの通った跡があります。いわゆる蟻道です。」と、排水パイプの汚れを示した。そこには、白アリよってパイプが削られた跡と、コンクリートに穴があけられた跡があり、その周囲に茶色く排水が染みた痕跡もあった。

 

 「しかし、ここには白アリが生存するための食糧はないはずですが。」なおも、職員は納得のいかない様子であったが、「ええ、そうです。普通の白アリでは生存できないでしょう。ですが、今ここにいるのは普通の白アリではないのです。詳しくは説明できませんが、改良された白アリがいるのです。」と、橋本は改良された白アリの存在を主張した。

 

 白アリたちは、配線をかじりショートさせていたのだが、ヒューマノイドたちは、電源装置のショートした配線を修復していった。しかし今もまだ、配線の傍らには夥しい数の白アリが蠢いていた。