「大沢美穂は、首都圏大学英文科に入学、在学中はテニス部、広告研究会などに所属し、ミス首都圏に選ばれたこともあります。

 ところが、3年時からは、オーストリアのウイーン国立大学に留学し、経済学を学びました。
そして、大学院まで進み、経済学の研究を続け、博士号をを取得しました。

 帰国後は、現在の日本中央放送に入社し、記者として活動しています。両親は健在で、父親はスポーツ用品の輸入販売会社を経営しています。

 ざっと、こんな経歴ですが、ウイーン留学以外は特に変わったところはないようです。」

 里美の報告は、簡潔で特別なものではなかった。

 「引っかかるのは、何故オーストリアで経済学を学んだのか、と言うところか。単にキャリアを積むためならば、アメリカの方が良いだろうし、語学ならイギリスの方が良さそうだが。」

 斎藤も、一応引っかかるという程度で、さしたる疑問でもなかった。

 「まあ、ウイーンに行ったというのは、勉強以外に理由がありそうですよね。誰かを追っかけて行ったとか。」中西は、相変わらず、ゴシップ風の予想を立てる。

 「でも、それだけの理由で、博士号まで取るのは難しいのじゃないのか。」斎藤は、疑わしそうにケチをつける。

 だが、中西はなおも妄想を膨らます。「でも、その誰かが、経済学の教授だったりすると、どうでしょう。ミス首都圏ですからね。国際ロマンスかも知れませんよ。」

 「そうすると、中西の予想では、ウイーンの学者が相手だと?」

 「その可能性もあるかな、と。」

 そう言われると、斎藤も「う~ん、そう言うこともあるか。里美、その辺も調べてもらえるか。」と、納得気味になった。

 「ええっ、そうですか。調べますか。ウイーン留学時代の交友関係ですね。」里美は、少々不服気味だったが、承知した。

 「ところで、大沢美穂とはいつ会いますか。それまでに調べなくちゃいけませんよね。」里美が、尋ねた。

 「うむ、まだ決まってはいない。これから連絡して決めるのだが、相手はすぐにも会いたがっているだろうからな。出来るだけ急いでくれ。」

 斎藤も、まだ予定は決めていなかったが、今のところ問題はないように思えた。