モナは、里美の質問に適当に話を合わせながら答えていた。つい最近まで、5万年も土の下にいたとは気づかれないように。もっとも、そんな話をしたところで信じられるはずもないので、心配する必要はなかったのだが。

 「清人さん、先ほどの話に戻りますけど、保育所での事ですが、本当は何が起きたのですか。良かったら話して頂けますか?」と、里美に尋ねられたのだが、正直なところ清人自身ももう覚えていない。

 「スミマセン、僕も、その頃何が起きたのかよく覚えていないのです。ただ、その後の事だろうと思いますが、すごく不愉快な気分になったことは覚えています。

 保育所のみんなが、僕を取り囲み、攻め立てられたような、不安な気分になりました。その頃を思い出すと、不安な気持ちと、怒りが同時にこみあげてきて、心が破裂しそうになるのです。

 だから、思い出したくないのです。」清人は、とても苦しそうに、話した。

 「いやな事を思い出させて、ごめんなさい。もう、この話はやめますね。」里美は、性急だったのだと後悔した。

 「それでは、ここ最近の事ですが、この近くの葦原で、ホタルが出たり、動物の声が聞こえたり、あるいは蜂が出たり、と異変が続いていますけど、そのことについて何かご存知なことがあれば、お話し頂けますか。」

 里美は、話題を変えて、マスコミで問題になっている怪現象について尋ねた。

 だが、清人はこれについても、本当のことは隠した。

 「はい、それについては、マスコミの方が来たりして、騒がしくなっているのは分かっています。でも、僕はこの通り、ここから外には出ないので、詳しいことは何も、知らないのです。」

 まだ、里美を信頼できるかどうかわからないのと、仮に信頼できたとしても、自分の話す内容が受け入れられるとは思えなかったからだ。

 それでも、里美の態度や話し方から、清人を尊重していることが伝わってきた。もっと、親しくなりたい、と清人にとっては初めて経験する不思議な感情が芽生えた。