メイドは白いカチューシャに白いエプロン、紺色の制服姿で、短いスカートから白い足がのぞいている。髪は緩くパーマのかかったピンク色のボブヘアで目は緑色をしている。何かのコスプレなのか、吾妻清人の好みなのか。
中西は、張り出したモナの胸に目を奪われている。斎藤も、予想外のことに言葉を失ってしまった。
「ええっと、あのモナちゃんはここのメイドさんなのかな。」斎藤は、何とも締まりのない質問をして、自分で恥ずかしくなった。
「はい、ここで清人お坊ちゃまのお世話をさせていただいています。どうぞごゆっくりなさってください。」
出された麦茶に口をつけると、ほんのり甘い味がした。何を質問したものか、考えあぐねてしまい、思わず窓の外を見ると、ゆっくりと動いている。不意に列車が加速し、思わず身体が締め付けられた。
「何だ、列車が動き出したのか?」斎藤が思わず、声を上げた。中西も驚いて、窓の外を見る「そうみたいですね、確かに進んでいますよ、斎藤さん。」
「ちょっと、モナちゃんこれは、この列車は動いているのか?」斎藤は、そんなことはあり得ないと思いながらも、たまらずモナに尋ねた。
「いいえ、これはモニターです。列車の旅の気分を味わっていただくために、このような装置になっているんです。」モナはニッコリ微笑んで答えた。
『しかし、この揺れる感じと、加速度で締め付けられような感覚は、実際に動いているとしか思えない。』斎藤は、モナの説明を聞いても、疑念は消えなかった。
列車はスピードを増してゆき、遠くに海岸線が見えてくる。更に速度は上がり、遂に窓の外は光で真っ白になった。と、次の瞬間には、急に減速し、どうやら海沿いの山際に到着したようだ。窓の外には海辺の景色が広がり、眼下に緑の島々が点在しているのが見える。
「ここは、どこに着いたんですか、ずいぶん綺麗なところですよねえ。」
列車が止まり、中西が感動したように尋ねた。