――― この星は、『天の船』を作った人々が、かつての故郷の星を模して作ったものです。普通の星と違うのは、ここでは意識が現実化するということです。私たちの、意識の力がこの星で、増幅されるのです。星によって、重力が異なるように、この星の意識の力は地球を遥かに超える強さを持っています。

 

人の欲望には、段階があるといわれます。また、欲望に従うのではなく、理性によって選択することが人の精神の自由だともいわれます。では、その選択の基準とは何でしょうか。欲望の段階の基準とは何でしょうか。そのようなものが、本当にあるのか、それとも世界に基準などはなく、ただ存在があるだけなのか。

 

これらのことを、かつて悩みました。道徳的な基準がなければ、人はただ野蛮な状態になるのではないかと。

 

ですが、今のところ、私にはそのような基準が世界にあるとは思えません。いえ、世界は、そもそもそのような道徳的な存在ではないのではないか、と思っています。

 

世界というものが、客観的に存在するのではなく、人々の意識によって成り立っている、あるいは、意識それこそが世界ではないか、と思っています。

 

不思議なことに、世界には私と、それ以外の意識が存在すると思われます。ですが、その私も、私以外の誰かも、意識の本体は見つからないのです。思考している私や、運動している私、感情が激している私、それらを観察する私。結局、どこにも私はいるけれど、どこにも本体はない。私の中に、貴方やほかの誰かがいるけれども、私の他の誰かの本体はない。

 

そうして観察し、思考するうちに、ふと気が付く瞬間があります。この意識が世界全体なのではないかと。私や、貴方や、ほかの誰かをも合わせた、世界の全体が意識そのもので、それの他にはない、ということ。

 

この星は、かつてそのような意識の力を純粋に高める為に作られたのです。ですから、ここにいる人々は、意識のみなのですが、それを私たちは、あたかも実態として認識するのです。それぞれの人々の、意識が生み出す物語が、この星のすべてなのです。

 

そこには通常の因果律などというものはなく、ある人の意識の変化によって、過去からの時空間の出来事がすべて変わってしまうのです。過去や、未来というものは存在せず、ただ現在があるだけなのですが、私たちは、過去や、未来として想像し、現在そのものは認識できないのです。

 

人々の意識の変化に応じて刻々と変化する現在は、私たちに、過去に対する認識を刻々と変化させ、未来に対する、想像を刻々と変化させているのです。

 

「このような世界を作った人々は、どこにいるのですか。」

 

「彼らは、遠い昔に、地球に来ました。そして『天の船』を作ったのちは、また宇宙へと旅立ちました。ですが、彼らの意識はいつも私たちと共にあります。私たちの意識の力を強めているのです。

 

 彼らもまた、意識の旅の途中にいます。意識の力の赴くままに、気づきを求めて旅しているのですよ。

あなたも、その旅に、意識の更なる深みを目指す旅に、この船で共に出掛けてみませんか。」

 

山本一郎に誘われて、私と田口刑事は、どこへ行くのか全くわからない『天の船』での旅を続けることにしたのだ。

 

NEXT LIFE  了