「kさん、月成が死んだよ。自殺らしい。・・・これで、取あえずクーデターは無くなった。」
「でも、一体どうして月成が自殺したんですか?」
「恐らく公安からマークされたことが原因なのだろうが、教団から警告されたのかも知れない。」
「花澤から、見限られたという事ですか。」
「まあ、本当の処は分からないが、甲州建設の遠藤も、クーデターには反対していたようだったからな。教団内部で、争いがあったのかも知れない。」
「そうすると、凛はどうなりますか。無事でいられるという事でしょうか。」
「分からないな、その佐久間良治との関係も分からないしな。でも、俺は波多野の方に行ってみるよ。月成とは、どういう関係だったのか、確かめておきたいのだ。」
――― 鈴木は、東久留米の波多野の会社を訪ねた。
「また来たのかい、うちは、こないだも話したように、事件とは関係ないんだ。話すことは無いよ。」
「いえ、この前は失礼しました。今回訪ねたのは、波多野さんと、月成さんの関係についてです。室田さんは、以前アーリア商会が破産した後で、山梨の甲州建設に行かれましたよね。先日甲州建設の遠藤社長にお話を伺ったのですよ。すると、神州光輪会の、月成さんも甲州建設にいらっしゃった。
あなた方は、どういう関係だったのですか。」
「今頃、それを調べるのは何故ですか? あなたこそ、本当の理由を話してください。それであれば私も正直に話そうと思いますよ。」
――― 尤もな話だよな。今頃になって、10年前の破産の話をされても、思い出したくもないだろうし、それが一体何の為なのか、納得もできないだろう。だからと言って、波多野は、前の世界の事を覚えているだろうか。
「分かりました。では、全て話します。波多野さん、私は、池袋で刑事をしていました。前の世界での話です。ある日、畔倉香という女性の免許証が落し物で届けられました。
その免許証を調べていると、それを、捨てたのが室田哲男という男で本名は波多野紘一と分かりました。その男は、山名響子という女性との間に子供がおりまして、それが山名香と言い、後に結婚して畔倉香となった。
つまり、波多野紘一の娘が畔倉香でした。その香は、神州光輪会の巫女として活動していましたが、ある事件に巻き込まれ、重体となりました。免許証はその時に紛失したものと思われます。
そして、私はその事件について調査する過程で、『天の船』というスピリチュアル団体の山本一郎先生を知りました。そして、山本一郎先生のお話に従い、私と免許証の届主である清原真人は畔倉香の命を守る為に、この世界にやって来たのです。
波多野さん、思い出して頂けましたか。」