田倉も、思いを話し始めた。

 

「私は、その事を、何故繰り返し生きるのか、を花澤先生に尋ねてみました。すると、先生は、人生の過ちを正す為だと仰いました。そして、『人生には目的があるのだ』と言われました。『その目的は、しかし今はまだ明かされない、いずれ時が来ると知らされる』と言われました。

 

 今もまだ、私には目的が何なのか分かりません。しかし、過ちを正す為というのも目的の一つではないか、と思っています。 私にとって、かつて月成の行動を抑えられずに、山名響子を死なせたことは、過ちだったと思っています。それを、正したいと思います。

 

・・・その一つに、実は山名響子が慕っていた、佐久間良治という者の件があります。12年前の事なので、今更、とは思いますが、あれは月成によって、拉致された、ともいえるのです。」

 

「その件ですが」遠藤が、少し心配そうに話した。「佐久間良治は、甲州建設で働いているのですが、それを探している鈴木というジャーナリストがいます。その者に、知らせてはどうでしょうか。」

 

――― 鈴木というジャーナリスト? 「そいつは、波多野の事も調べていましたか?」山川が尋ねた。

 

「はい、波多野の事も尋ねていました。」

 

「そうですか、その鈴木というジャーナリストには、心当たりがあります。ですが、その者に知らせるという事は、我々も罪に問われる可能性もあります。

 

 いや、恐らく月成だけでなく、我々も捕まる事でしょう。そうすることで、月成のクーデターは無くなり、山名響子は救われるかもしれません。問題は、その事に我々自身が耐えられるのか?という事です。」

 

「それは、今一つの過ちを正せば、それと同時にそれに関わる私達も正される、という事ですね。」

 

「そうなのですよ。つまり、我々自身が、本当に新しい人生を生きる決意があるのか。今までのやり方を変える準備ができているのか。そこの処です。」

 

 田倉が、分かった、と言った。

 

「そうです、そこです。何故、何度も同じ人生を繰り返すのかが、分かりました。きっと、そこです。自分自身が変わることを拒んでいたのです。知らない別の路を歩むことを恐れていたからですね。しかし、その恐怖に打ち克たねば、新しい人生は始まらないのですね。」