――― 山川は、3人で話し合う内に、ふと山本先生の話を思い出した。波多野が、山奥で道に迷った時に山本先生に出会った、という話である。

 

「お話し中すみませんが、ここで私達が、このような話し合いをするのは、初めてですか?」

 

「どういう意味ですか?」遠藤も田倉も、山川の質問の意味を図りかねた。

 

「いえ、私も、気が付いたのですが、此方の世界で出会う人に、2種類あるのですよ。一つは、自分とは関りの無い人たち、出会ったところで、唯通り過ぎてしまうだけの人達です。縁のない人ですね。

 

 もう一つは、出会うことによって、その後の運命が変わってしまう人達、縁のある人です。勿論、その縁も、その先変わってしまいますので、途中で、縁が切れることもありますし、また縁が復活することもありますが。

 

で、ここで話している自分たちの姿が、ぼんやりと見えまして、そうすると、それはかつての世界ではなかった姿だと気が付いたのです。

 

私達3人がここで出会うのは、どうしてなのかな、と気になってしまいまして。それで思い出したのは、波多野が、10年前に山の中で山本先生と出会って、助けられた、と言っていました。

 

それから、あいつは私の誘いを断って、地道にまともな人生を送ろうとしているようなのですが。それも、よく考えたら、前の世界のあいつとは違うのですよ。

 

何故だか、分かりませんが、人の人生は、出会いで変わるのかな、という気がしました。」

 

遠藤が、うなづいて話した。

 

「それは、私達が、ここで話し合う事で、月成の起こす計画を変えることが出来るという事ですね。」

 

「そうです、以前は、月成の計画を止めることは出来ませんでしたが、今度は違う結果になる様な気がします。

 

そして、これは、一度山本先生に会って詳しくお聞きしたいのですが、妙に感じることがあるのです。」

 

「どんなことですか?」

 

「私は、この世界で、今まで生きてきて、自分という物をよく見てこなかった、考えてこなかったのです。というよりも、殆どの事が、自動的に進むので、何も考える必要がなかったのです。

 

そういうと、言い過ぎかもしれませんが、兎に角、何も考えずに、注意を払う事もなくとも、まるで自動運転の車にでも乗っているかのように、人生が過ぎてゆくのです。皆さんは、どうですか?」

 

山川が、そう問いかけると、遠藤も田倉もうなづいた。

 

「そう言われれば、自分について深く意識することもなく、言ってみれば目を瞑ったままでも生きてこれたような気がします。勿論、悩んだこともありますよ。若い頃はね、だからこそ、花澤先生に従っているわけですから。

 

 でも、本当の処はどうなのか?言われたことを、無条件で受け入れて、それが信じることだ、なんて思ってやり過ごしていたのかも知れません。

 

目を瞑って生きたからと言って、それが楽な人生だった、幸福だった、というわけではありません。つまり、本当の自分を見ないようにしていた、避けていた、という事です。」

 

田倉が、過去を振り返って、そう話した。