台東区のコリア貴金属協会の山川の処に、月成から連絡が来ていた。国会図書館前に集合し、総理官邸前までのデモ行進についての案内だった。

 

今までと同じ、政治集会への参加要請の様に見えるパンフレットだったが、リーダーは10名で各部隊に別れる、となっていた。参加人員も、200名となっていた。今までにない規模である。早急に半島から人員を集める必要があった。

 

――― 今までとは違うな、200名も用意するのは簡単ではない。半島からの人員では間に合わない。在日にも応援を頼むか。しかし、在日だと、その後の生活にも影響するから、政治的な事には関わらないものが多いのだが。

 

半島から、ツアー旅行者を募って、デモに参加させるか。アルバイト代を出せば、来るだろう。ついでに観光もできるのだから、損な話ではないはずだ。

 

 その程度の話だと思っていたが、月成の部下だという男から電話が入った。

 

「甲州建設の橋詰と言います。月成取締役からの指示です。来月予定の集会のパンフレットはご覧になりましたか?」

 

「ああ、今見たところだよ。でも、200人はずいぶん多いな。何かあるのか?」

 

「これは、蹶起です。デモ隊は、そのまま総理官邸へ向かい、突入する予定です。ですので、メンバーはそれなりに動ける方を選んでください。」

 

「蹶起だって?そんな話は聞いてないよ。選挙に立候補するだけじゃないのか?」

 

「その日には、甲州建設からも50名ほど向かいます。そのほかに神州光輪会のセミナーから100名参加予定です。そして、今までの遊説演説などの活動からの、参加見込みが約50名。総勢400名になります。」

 

「そんな事をやって成功の見込みはあるのか? 失敗した場合にはどうするつもりだ?」

 

「取締役は、必ず成功すると言われています。」

 

「いや、成功って、何をどうするつもりなんだ? 成功した場合にはどうなるというんだ。」

 

「それは、取締役が考えています。我々からは何も言うことはありません。とにかく、山川さんは200名の人員を揃えてください。必ずです。」

 

――― 何だ、この一方的な話は? まずいな、半島からの人間で良いのか? 誰に相談するか?

 

 月成は、元々、テロリストだ。そんな奴の考えは、相手を殺すことが成功で、その後の事は何も考えていないに違いない。下手したら、単に騒ぎを起こして、自決して、それで終わりってこともある。

 

過去のテロリストは殆どそうだ。兎に角、死ぬことしか頭にないんだ。そんな奴の指示に従ってこっちまで、自決しろ、なんて言われた日には目も当てられない。