田倉は、木曜日には月成が戻ってくると師岡刑事に伝えた。しかし、月成は木曜日に戻るつもりはなかった。

 

「田倉さん、警察が来たそうですけど、適当にあしらってもらえますか。私は、当分そちらには戻りませんので。」

 

「戻らないって、どうかしたんですか?警察には、もう伝えてあるので、木曜日にまた来ると思いますよ。」

 

「捜索願いなんかで、そんなに真剣になりますか?山崩れで、道路が不通になったとでも、言っておいてくださいよ。兎に角、いつ踊れるか予定が分からないと言っておいてください。」

 

強引に、田倉を説得したが、田倉も納得はしていなかった。

 

木曜日に約束通り、刑事がやって来た。

 

田倉は、言われた通り、山崩れで、戻れなくなったと伝えた。

 

「山梨のどこですか?」

 

「山梨というだけで、詳しくは分かりません。」

 

「そこは、この教団と関係のあるところですか?」

 

「いいえ、こちらは何も関係ありませんので。」

 

「教団の仕事で出張しているのではないのですか?」

 

「いいえ、月成はここで働いているわけではありませんので。」

 

「でも、玉響クラブは教団の運営ではないのですか?」

 

「あの、月成と教団は雇用関係にはないと申し上げているんです。」

 

「では、出張と仰ったのは、どういう意味ですか?」

 

「月成が出張と言っていたので、そう申し上げただけです。月成の仕事上の事だとおもいますよ。」

 

「月成さんの、仕事先は何処なんですか?」

 

―――――― 何てしつこい刑事なんだ。ここには、居ないのだから、仕事先でもないのだから、これ以上聞く必要ないだろう。渋谷署の師岡慎一と言ったな。この男は、注意した方がいいな。ただでさえ、月成にはテロ容疑があるのだから。教団に迷惑を掛けられては困る。

 

「あの、こちらは信仰上の関係ですので、それ以外の事は存じません。そちらでお調べください。」

 

「そうですか、それでは今日はこれで失礼しますので。また連絡があれば教えてください」

 

―――――― おかしい、この前の時とは雰囲気が違う。これは、何か隠しているな。月成か、まさかとは思うが、前を調べた方がいいかもな。

山梨と言っていたな。一応山崩れの情報も調べておくか。通行止めになっている処があれば、そこから何か分かるかも知れない。

 

師岡刑事は、不審に思いながらも、一旦出直すことにした。