川南一作(波多野)は山梨の甲州建設の、建設現場で働いていた。そこは山奥の現場で、移動はすべて車を使い、プレハブの寮住まい。建設と言っても、道路の修復などが主で、外部の人と逢うことは滅多にない。完全に隔離された状態だった。

 

ある時、涼を求めて、山を流れる川で水遊びをしていた時に、仲間と離れて、近くの洞窟で休んでいた。そうすると、中から、光るものが見えるのに気が付いた。

 

時おり入る日の光に反射するその光に惹かれ、中をよく探してみると、水晶の塊があった。それを見つけると、波多野の頭にある考えが浮かんだ。水晶を集めて、持ち出し、ここを逃げ出して、もう一度外の世界でやり直すことである。

 

一度その考えが浮かぶと、この山奥で、何もできないまま一生を終えるのかも知れないと、絶望していたのだが、突如、ここを脱出するという希望が生まれた。

毎日の作業にも張りが出て来たのだ。

 

雨が降る日には、仕事は休みになる。そんな時には、寮で昼間っから酒を飲みながら、チンチロリンなどの博打に興ずるのが常である。

 

その日は、朝から雨が降り続き、夕方になっても止む気配はなかった。初めは数人で花札などをしていたが、皆途中でやめて部屋に帰っていた。最後に、川南とその男の2人が残り、チンチロリンで勝負していた。

 

その男が、負けて、いざ生産する段になると、突然関係のない話を始めた。

 

「お前、俺たちに隠している事があるだろう?」

 

「何の事だよ?」

 

「知ってるんだよ。お前がこっそり、あの洞窟に何かを隠しているところを見たんだよ。何を隠したんだ?」

 

「知らないよ、何を見たんだよ。」

 

「お前が、素直に白状しないのなら、監督にばらすしかないな。もし、金目の物なんかを隠していたら、どうなるかわかるだろう?」

 

「何も知らないよ、いい加減なことを言うな。それより、ここの負け分3万を払えよ。」

 

川南は、必死になって否定したが、酔った男は、興奮していた。

 

「ふざけんな、お前こそ、ばらされたくなかったら、10万払えよ。それでチャラにしてやるよ。」

 

「お前いい加減にしろ。3万払いたくないから、言いがかりをつけてるんだな。」

 

「監督の処に行ってくる。」そう言うと男は、立ち上がり、表に出た。

 

川南は、ここでバラされたら、計画が駄目になると焦った。