梢ちゃんが偽物だとしても、そもそも確かめるすべがない。月成にしても、そう言えば波多野の会社で電話に出たためしがない。月成などという名前に記憶はないが、だからと言って、でたらめだとも言い切れない。

 

 彼らが、偽物だったとして、どういう目的を持っているのか。

 

 香のそばにいて、守るのが私の役割だとしたら、襲撃事件の起きる直前から始まるのが自然だ。

 

 なのに、香が生まれる前からスタートしている。ということは、やはり今の時点で危険があるということなのだろう。

 

 今は、山名響子を守ることが即ち、香りを守ることになるのだな。

 

 香が襲われたのは、何か教団内部の争いと言っていたようだったな。

そうだ『天の船』だ、山本一郎が、そう言っていた。その組織の日本の代表だと言っていた。私が山本に会ったのは1978年ごろが最後だ。今から2年前か。

『エクス』は、まだあるのだろうか。

 

「鈴木さん、エクスという喫茶店があるんですけど。今度付き合ってもらえませんか。」

 

「いいけど、どこにあるの?」

 

「東町です。六本木通りを少し広尾の方に行ったあたりです。そこで昔、山本一郎に会ったんです。」

 

「ああ、エクスか。確か石井刑事が話していたやつだな。そこは、確か左翼革命主義者のたまり場だったという。でもどうして、急に。」

 

「少し、思い出してきました。あそこで、山本一郎と会ったんですけど、紹介してくれたのは『日本労農人民党』の人でした。ゆかりママの弟さんが入信したという『神州光輪会』の花澤も、初めは『日本労農人民党』に関わっていたんですよね。」

 

「そうだったな。でも、随分前の話だけどな。関係があるとは思えないけど。」

 

「ええ、実際には時間が違っていますからね。花澤が『日本労農人民党』に関係したのは1950年代。山本一郎がエクスに出入りしていたのは1970年代。時間はずれています。

 

 でも、山本が『天の船』に関わったのは1970年代。花澤が『神州光輪会』を作ったのは1975年。それを考えれば時間が一致するかもしれません。」

 

「そうか、そうすると2人は何処かで接触していた可能性があるんだな。」