鈴木が私に、目配せをした。
「ちょっと、俺、トイレに行ってくるわ。」
「ああ、じゃあ僕もちょっと、いいですか。」
2人でトイレに立った。
「kさん、あのガネーシャが波多野からの貰いものってことは。まさか、梢ちゃんの本名が山名響子ってことか?」
「ええ、多分そういうことだと思います。本名を聞いてみましょうか?」
「いやあ、一応後でゆかりママに確認した方がいいんじゃないか?」
「そうですね、あんまり追及すると、怪しまれますね。」
「でも、そうすると、今梢ちゃんのお腹には畔倉香がいるわけだよな。」
「そうだと思います。」
「ということは、これからお腹が大きくなって、働けなくなるわけだよな。そして、その響子の面倒を見てくれる誰かが出てくるわけだよな。」
「ええ、その予定ですね。」
「誰なんだろう?この店の客なのだろうか?」
「どうなんだろう。でも、スナックの客がそこまでするでしょうか?」
「そうか、それもそうだな。全然別の知り合いなのかもな。それにしても、ここで山名響子に会うとは。どうなっているんだ。これって、何か歴史とか未来とかが変わっちゃうんじゃないのか?」
「ううん、でも鈴木さん、ここは確かに過去にそっくりだけど、別にタイムマシンで過去に戻ったわけじゃないですからね。別の星に来ているわけですすから。」
「新しい人生か?でも、何だかややこしいよな。過去を繰り返しているような、そうでもないような。輪廻とか、転生とかともちょっと違っているような、変な感じだよな。」
「そうですね、今までは、私としては波多野の行方不明の原因を知りたいという気持ちが強かったんです。つまり、私の気持ちとしては、波多野の私に対する誤解を解きたいと思ったんですよ。私が波多野を追い込んだわけじゃないのだと、波多野にも理解してもらうことで、自分の気持ちも落ち着くと。
ところが、ここで山名響子に出会うというのはちょっと予想外で、どうしたものかと戸惑っています。」
「まあな、俺もそうなんだよ。安宅商事の件を何とかしたいと思っていたけど、結局山川があっさり行方不明になるし、被害者もそんなに騒がずに収まった。何かが違うんだよな。」
男2人の勝手な妄想はとどまるところを知らなかった。
2人そろって、カウンターに戻ると、「ちょっと長いわね。何かの作戦会議?で、結局置物の修理方法は見つかったの?」とゆかりママがせかした。
「ああ、それ僕に心当たりがあります。御徒町の方に石材工房があるので、よかったら梢ちゃん一緒に行って見ませんか?」