微笑む老人のその瞳は外側が黄金色で中心は明るいエメラルドのように輝いていた。
その不思議な輝きを見た刹那、私の全身がその瞳に吸い込まれていった。
周囲はすべて黄金に輝く柔らかな壁となり、その中を私は漂うように浮かんでいた。
時々、言葉のような音が響き、それに合わせるかのように柔らかな壁が動き、同時に私は壁に包まれて少しずつゆっくりと回転するのだ。
声は、穏やかで歌う様に優しく響く。言葉を理解することは出来ないのだが、聞いていると、心は落ち着いてゆく。
ゆっくりとしたその旋律は、まるでゆりかごの様に私の体を揺らす。
黄金の壁はやがて、輝く太陽に変わりその周りを青い空が広がっている。
気が付くと、一層の船に乗り、仰向けになって空を仰いでいる。太陽がまばゆく、目がくらむ。身体を起こし周囲を見ると、葦の原が広がり私の乗った船は、大きな湖の岸辺に浮かんでいる。
やがて、船はゆっくりと波間を漂う。声が聞こえる。異国の言葉で、理解はできないのだが、祈りをささげる人々が見える。
船は、大河をさかのぼり、高原へと向かう。また別の人々の姿が見える。ヤギやロバを追う声が聞こえる。船は、海のような大きな湖を渡り、また別の河を遡る。
幾つもの山を越え、高原を越え、人々の賑わう市場を越え、また平野を越え、大河の河口へと行き着く。これは、揚子江か。見覚えのある人々の顔になる。
海へと出ると、島々を越え、黒潮に乗り、やがてまた大きな河口に出る。
2つの神社が見える。葦原の中に聳える鳥居が朱く光る。
奥の方の神社で、一人の巫女が生まれる。
巫女は美しく育ち、成長すると、軍勢を従え、馬を率いて船に乗る。多くの舟が馬を乗せ、出発する。一人の武人が鹿の角を持った兜をかぶり、軍勢を先導する。
旅の途中で、巫女が倒れた。軍勢は、引き返した。
ベッドに横たわっていた女性は、身体を起こし、私を見ていた。