ガネーシャを預かって、その家を出ようとして玄関を出ると、丁度1台の車が停車した。中から男性が2人降りて来て、山中家に向かってきた。

池袋署の刑事だった。

 

「清原さん、どうしてここにいるのですか?」

 

「こちらのお宅の引っ越しの関係で来ました。」

 

「引っ越しですか?」

 

「刑事さんこそ、どうしてこちらへ来られたのですか?」

 

「実は、こちらは畦倉さんのご実家なんですよ。」

 

「そうですか、それでは私はこれで失礼しますので。」

 

「では清原さん、また後でお伺いしますので。失礼します。」

 

 まさかここで、池袋署の刑事にあうとは。

これでは、私が何かを隠しているように思われてしまう。

何も、していないのだが、小心者の私は心配になってきた。

 

 行方不明者を追って、実家まで尋ねるなんて、そこまで普通調べるのだろうか。きっと事件に巻き込まれたに違いない。そうすると、あのカード入れは、あそこに落としたのではなく、犯人が捨てて行ったとも考えられる。

 

 しかし、もし犯人が捨てたのだとしたら、あまりに無造作すぎる。防犯カメラを調べれば、誰が捨てたのかすぐ分かる事だ。では、犯人ではないとしたら、誰が捨てたのか。

 

 畦倉香がどこかで落としたものを、誰かが拾って、使えそうにないと思ってまた捨てた。そういう事もあるだろう。つまり、事件とは直接関係がない事もある。

 

 だが、そのカード入れを拾った人物が、その落とし主の実家にも出入りしていたとしたら、警察はどう思うだろう。怪しまれても仕方がないではないか。

 

 そうだ、あの刑事はまたあとで来ると言っていた。やはり何かを疑われたのだ。だが、畦倉香は結局どうなったのだろう。既に死んでいるのだろうか。考えたくはないが、誰かに殺されたりしたのだろうか。

 

 いや、もし殺人であれば、私はとっくに拘束されていてもおかしくない。

すくなとも、事情聴取はもっと厳しく受けているはずだ。とするとまだ殺人事件ではないのだろう。

 

一体警察は何を調べているのだろう。

 

 ガネーシャを修理するために、御徒町にある石材工房に向かう途中、私の頭の中は、ずっとその妄想で一杯になっていた。