2140年 8月9日(火)トーキョー

 私ロクサーヌは、トシマクの2丁目を探していた。

道行く人に尋ねると、そこは平和通りの隣にある文化通りのことだろうという。

文化通りで探すと、ピアノバー「2丁目」があった。中に入ってみる。

この前喫煙所で見た人がいた。

 

「こんにちは、来てみました。」

 

「あら、まだ早いけど。まあいいわよ。そこのカウンターでまってて」

 

バーテンダーの人にアイスコーヒーを頼んだ。

「面白い人というのはどんな人ですか?」

 

「今来るわよ、コンさんっていうの。本人はコンスタンティノス・パライオロゴスだと言ってるけど、長すぎるのよ。」

 

 

コンさんがやってきた。

「皆さん、お待たせしました。私が、最後のローマ皇帝コンスタンティノス・パライオロゴスです。」

 

不思議なあいさつをする人だった。「最後のローマ皇帝とはどういう意味ですか?」

 

「私は、1453年5月29日コンスタンティノープルが、オスマン帝国の攻撃の前に滅亡した時の皇帝だった。前の日オレンジ色に光る夕日の向こうに、トルコ軍の10万の隊列があった。

 

 私は、すべての市民と将兵に向けて最後の演説をした。

『命より大切にしなければならないものが4つある。第一に我らの信仰、第二に故郷、第三に神の代理人である皇帝、最後に肉親や友人である。それらの為に我らは命を懸けて戦う。キリストへの信仰の為、故郷の為に死ぬのだ。』

 

 深夜になって、トルコ軍が攻めてきた。必死に戦ったが、ついに夜明け前になって、城壁に三日月の旗が翻った。私は、死に場所を求めて、城壁の外へ、トルコ兵の中に突撃したのだ。

すると、どういうわけか、このトシマクの壁の外に出てしまった。」

 

「あなたは、すると、死に場所を失ってしまったのですね。」

 

「そういうことになる」

 

「私は、文明の衰退がなぜ起こるのか、その答えを探しているのですが、分かりますか?」

 

「衰退ということについては、私ほど詳しいものはいないと、自負している。

何しろ、ビザンツ帝国と言われてから、1千年、ローマ帝国から数えると、2千年の間、衰退してきた。もちろん初めは成長し繁栄したのだから、その分を差し引けば、1500年くらいかも知れないがね。」

 

私は、そのことについて詳しく聞きたいと思った。

しかし、ラム・次郎は店の『おつまみセット』が気になっているようだった。