芦名史人の意識は、ソグディアナの大地を漂っていた。身体を失い今は心だけとなっていたが、どこへ向かって良いのか定まらなかったのだ。
ロクサーヌの心は芦名の傍にいて、自分の身体が芦名によって危地を脱し、そして羽栗翔の母親という女性の身体に変わったことを知っていた。
ロクサーヌは芦名に話しかけた。
「芦名さん、私はロクサーヌです。私を助けてくれてありがとう。」
「あなたは、ロクサーヌ、あの女性の心ですか。私が見えるのですか?」
「はい、死んだはずの私の身体をあなたが助け、そして羽栗さんが今は私の身体に乗って生きていること、私は全てを見ていました。」
「そうですか。では、あなたは、私のこの状態がどういうことなのか分かるのですか?
私は21世紀の日本に生きていましたが、ある日突然心だけがこの世界にやってきて、あなたとして、あなたの身体に乗って生きていました.
ですが、今はまた、身体を失い意識だけがある状態です。正直途方に暮れています。」
「私も、心が身体から離れ死んだのだと思いました。でも、身体はその後も動いていて、あなたとして生きているのを見て、とても不思議な感じでした。
私は意識だけとなり、この世界を彷徨っていました。すると、ある方が現れ、私を大きな乗り物に連れて行きました。そこで、私は色々なことを教えてもらいました。
今では、自分の状態が少しは理解できるようになりました。ですから、もしあなたが、私を信じてくれるのなら、一緒にその乗り物の処へ行きたいと思っています。
その人達に会えば、少しは理解できるのだと思います。」
「分かりました。では一緒に行きます。連れて行ってください。」
二人は共に砂漠へと進んで行った。すると、何もない砂漠の中に、巨大な建物が在った。銀色に輝き、楕円形をした卵の様な建物に見えた。入り口が現れ、二人は中に吸い込まれていった。
中に入ると、白い長衣を着た男が穏やかな表情で迎えてくれた。
「ようこそ、芦名さん。私はこの船の船長でジェライルと言います。初めてお会いしますが、私はあなたの敵ではありません。安心して、知りたいことを何でも聞いてください。」