教会で、『使い』のことや、『創世記』のことをあれこれ相談して、数日が過ぎた。
これ以上メスティアにいても、進展はなさそうである。

私は丁仙之にこのことを報告すべきではないか、とセルナ君に提案した。
これから、メソポタミアに行くのか、東へ向かうのか、思案していた。

そこへ、アラブの兵士の一団が現れ、乱暴な態度司祭に詰め寄る。

「ここに、神の使いのことを話すものがいると聞いた。その者をここに連れて来い。」

「その様な者はおりません。何かの間違いでは?」

「隠すと為にならないぞ。村中で噂になっているのだ。東方から来た者たちがいるだろう。」

「どのような噂ですか?確かにサマルカンドからの旅の者はいますが、神の話などはしておりません。」

「では、どのような話をしているというのか?。その者たちの話を聞いてやろう。すぐここに連れてきなさい。」

私たちは、司祭様に呼ばれて、アラブの兵士の前に出た。
セルナ君が、これまでの経緯を話した。


「そうすると、夢の中に『使い』と称するものが出てきたが、神の使いではないのだな。」

「はい、神の使いではありません。」

「では、誰の使いなのだ?また12の青い星を探しているというが、それは12のイマームのことではないのか。今、街では12番目の『隠れたイマームの使い』、というものが国を乱しているのだ。

 

去年第11代のイマームが亡くなった。そして今年は第12代のイマームが突然いなくなった。街では『隠れた』と言われている。その事と、関係があるのではないのか?」

「すみませんが、その様な話は知らないのです。イマームとは何でしょうか?」

「貴様、イマームを知らないというのか。イスラム教の教主様のことだ。ますます怪しい奴目。」

司祭様が慌てて、止める。
「申し訳ございません。この者は、少し心を病んでおりまして。それで、このメスティア村には療養のために来たのです。生まれつき、頭も悪く、物覚えが悪いのです。どうかお許しください。」

「心の病か、何にしても、怪しい一行だ。この村に留め置くことは出来ない。エレヴァン(アルメニアの首都)の役所に連れて行く。」

私たちは、まずいことになったと思った。
「ご主人様、どうしましょうか?このままだと、きっと刑務所のようなところに閉じこめられますよね。」

「うむ、しかし今は下手に動けばもっと厄介なことになる。どの道、ここは出なければならないのだから、エレヴァンまではおとなしく従おう。いずれ隙を見て逃げ出すより他ないだろう。」

ミトラが言う。
「俺たちは、こんな事には慣れているけど、セルナが心配だな。イスラムの世界で『イマームって何ですか』なんて、よく言えたものだ。殺されても仕方がないところだよ。」

私たちは、アラブの兵士に従って、エレヴァンまで行くことになった。