アシナ島で。

 

 セルナは、ヨルダネスとは別行動で、島の奥深くまで探検した。しかし、何処にも文明の遺物らしきものはなかった。虚しく日々が過ぎ去るのみであった。

 

 一方で、ヨルダネスは古びた塔の中を丹念に見て回った。壁にはめ込まれた、古代の絵と思われるものや、謎めいた人物像、それらはヒトの姿と獣の姿の合体したものや、燃える太陽をかたどったと思える放射状の触手のついた日輪など。一見して、解読不能の象形文字らしきものなどであった。

 

 それらの古代の遺物を、調べるのは長期にわたると、ヨルダネスは判断していた。

ヨルダネスは、文明の利器ではなく、古代人の心を知ろうとしていたのである。

 

 セルナは、そのような古代人の心には関心が向かなかった。一刻も早くルーム人の攻撃兵器を手に入れたかったのである。

 

 セルナは心に湧いた疑心暗鬼で苦しくなった。

『苦しい、心の奥に何か塊のようなものがある。吐き出してしまいたい。』

 

 すると、ティム・テギュンの口を通して、黒い石のようなものが吐き出された。

幾つもの石が吐き出され、それらは固まって一つの黒く丸い石になった。

そして、その石は密林の奥に転がってゆく。セルナは後を追って密林の中に入っていった。

 

 やがて、密林を抜けて開けた川岸に出た。

『このような川岸は今まで見たことがない。こんな所があったのか。』

川の岸辺に沿ってさらに進むと、飛行船のようなものが見えた。

そのドアの前に黒石が浮かんで停止した。

 

 黒い石から声が聞こえた。

「そのドアの中にお前の知りたいものがある。開けて中に入るのだ。」

 

 その声は、『ヨルダネスが裏切る』と言ったあの時の声のように聞こえた。

セルナが尋ねた。「その声は、またお前か?」

 

「そうだ、お前の心の奥の声だ。お前が知りたがっていた、ルーム人の攻撃兵器はこの中にある。

ドアを開けて、手に入れるのだ。」

 

 セルナは一瞬迷った。『遠くの声に捕まる』といったティム・テギュンの言葉を思い出したのだ。

 

だが、望むものが手に入るという誘惑に勝てなかった。