ジームラ・ウント - 1万年前
私ティム・テギュンは、遊牧民の出身である。と言っても、武人の家系ではない。
私の家系は他の人とは違い、遠くの声を聴くことができる。その為、古くより遠くの宇宙の声や死んだ人の声、また未来や過去など時空を隔てた声を聴き、それを人々に伝えてきた。
言寄せの家系であり、シャーマンの家系である。
ある時、ジームラウントの博物館で学芸員をしていたのだが、突然目の前に不思議な光景が浮かび、私の中で声がした。
『特別な力を持った武将が大きな川の激流の中で敵と戦っている。しかし、不死身の体に異変が起き倒れてしまう。味方である弟が必死で助けようとするが、皆激流に流されてしまう。
夜になり、学校のような建物の前で授業を受けるため、学生が並んでいる。しかし、明かりは見えず。まるで人気もない。並んでいる人に話しかける。「これでは授業をやっているのか全く分かりませんね。」「本当にそうだね。」
何階か上に行った部屋の入り口に、姿も見えないまま、言葉だけが響く。あの傷ついた武将がまた来て、開けてくれという。引き戸の入り口が開き中から人が出て来るが、初めは武将に気が付かない。誰も居ないのかと訝しがるが、やがて武将に気が付く。
武将が中に入るが、これが幽霊なのか、生きた人なのか誰も分らない。当の武将にもわからない。しかし、ここには武将の仕える貴人たちがいる様である。
横たわった年の頃60位の男性が、武将の顔を見て何かを言うが、声は聞こえない。武将の手を取っても温かみがまるでない。死んだような手である。』
私にはよく意味が分からなかったのであるが、何かの戦いで、死んだ人の思いが伝わってきた。その人たちは、本当は学問をしたかったようである。
そして、戦いに敗れた後、死んだ人たちの世界に行ったようである。そこは、学問の世界だった。
そして、私はその翌日、アシナ島に行く調査団に選ばれた。
ヨルダネスと共に滅亡したルーム人の文明を調べるためである。