セルナ君からの信号があった。
「教授、セルナ君がストップの信号を送ってきました。一旦こちらへ戻しますが宜しいですか?」
「うむ、そうしてくれ。データを手に入れたのかも知れない。」
セルナ君の意識が戻った。
「教授、戻りました。」
「セルナ君ご苦労だった。どうだ、データは手に入ったのかね?」
「いいえ、それがジームラ・ウントの警戒心が強く駄目でした。」
「そうか、出来なかったのか・・・。何か方策はないのかね?」
「それで、考えたのですが。彼らが、ルーム人の残した文明の記録を手に入れたのはアシナ島でした。なので、そのアシナ島へ行ってみようと思うのですが。」
「アシナ島へ?しかし、そこの記録は全部持ち帰ったのだろう?」
「はい、ですから彼らが、持ち帰る前にそこへ行ってみようと思うのです。」
「それは、可能なのか?その時代は遊牧民が支配していて危険なのではないか?」
「ええ。彼らのうち、ティム・テギュンという助手がヨルダネスと共に、アシナ島で記録を発見したのですが、そのティム・テギュンに成りすますというのはどうでしょうか?」
「どうやって、それが出来るというのかね?」
「はい、新しい量子コンピューターでティム・テギュンの意識に僕の意識を同調させるというのはどうでしょうか?」
「それは、つまりティム・テギュンの意識を乗っ取るということか?」
「はい、そうです。日本チームの経験では、kの意識をロクサーヌに同調させていたと思うのです。あの時は、完全に同調させることはできませんでしたが、新しいタイプの量子コンピューターであれば可能かと思います。」
私は、なんだか恐ろしくなった。
「待ってください、教授。」
「何だねオリガ君?」
「それは、危険です。こちらの意識が逆に乗っ取られることも考えられます。相手に乗っ取るつもりはなくとも、こちらに呼び込んでしまう、ということもあるのではないでしょうか?」
「うむ、確かにまだ成功したわけではないので、その危険もある。」
しかし、セルナ君は自信ありげに言った。
「万一に備えて、僕の意識の接続コネクターを2つ用意してください。1つはこちらといつもつないでおけるようにすれば、大丈夫だと思います。」
セルナはこころの中で思っていた。
『僕の意識のメモリーは元々2つ用意されている。1つは、惑星ルーム・ノヴァス人としての意識。もう1つは地球人としての意識。
これは1万年前に地球に来た時から、地球人として生きるために用意されていたものだ。
失敗すれば、僕が惑星ルーム・ノヴァス人だということが分かってしまう危険もあるが、それでもやり抜いて見せる。』
「セルナ君、どうして君はそんな危険を冒そうとするの?私には危険すぎてとてもできない。」
「彗星から地球を守りたいのです。」
「そんな・・・」
「まあ、オリガ君、セルナ君がそこまで言うからには自信があるのだろう。実際セルナ君は、既にシミュレータの世界に行っているのだから。ここはセルナ君に任せよう。」
どうして教授も簡単に許可するのか?そうまでして核融合プラズマ砲のデータが欲しいのは何故なんだろう。私には、この2人の危険な思考が理解できない。
それにしても、とうとうアシナ島へ行くことになった。私も何か対策を考えなければ、隠されたルーム・ノヴァスの秘密がわかってしまう。そうすれば、私はどうなってしまうのか?