メサス - 7千年前
メサスの神殿で。
「教主様、ラガシュ家のセルナという者が、来ておりますが。いかがいたしましょうか?」
「セルナですね。通してください。」
「教主様、私は神官ラガシュ家のセルナと申します。かつて、地球に旅立ったものです。」
「知っています。帰ってきたのですね。」
「はい、お約束通り戻ってまいりました。」
「地球の様子はどうでしたか?」
「はい、ルーム人はおりませんでしたが、かつてペーシュウォーダが来たと思われる痕跡はありました。」
「それは、どのようなものですか?」
「はい、地球人は私たちと似た伝説を持っていました。大洪水の伝説と、神による宇宙と人間の創造神話です。それは、善と悪との戦いの神話でした。」
「では、彼らもまたペーシュウォーダに作られた自動人形なのですか?」
「恐らくは、そうだと思います。ただ彼らは、自らが自動人形だとは気づいていないようでした。
彼らの皮膚は、我々のようなメタルではなく、たんぱく質の化合物によるものでした。
恐らく、水から生まれたためだと思われます。しかし、彼らは既に新しい自動人形を作り出しています。それらの進化を見ることによって、彼ら自身が自動人形をだったことを思い出すことでしょう。」
「そうですか、ところで私は今日不思議な夢を見ました。
大きな乗り物がゆっくりと周囲を威圧するかのように進んできました。それを見ていた人々はみな、恐れて立ちすくんでいました。
ところがその乗り物は、突然くるりと振り向いたかと思うと、猛スピードで壁に激突し爆発しました。炎が燃え盛り、金属とガラスの破片とがあたりに飛び散りました。見ていた人々は、何が起こったのかわからずただ茫然としていました。」
「教主様、それは私も見ました。今から千年後に彗星がやってきます。
それを見た人々は恐怖のあまり、その彗星を攻撃し爆破したのです。それから彗星の破片がこの惑星に降り注ぎ火の海となりました。実は、私がお話ししたいのはその事なのです。」
「どのようなことですか?」
「ジームラ・ウントは、その彗星を爆破したのち、一部のものだけを連れて、この惑星を見捨てて飛び去っていくのです。私たちの太初の神話が繰り返されるのです。」
「あなたは、何故それを私に話すのですか?」
「私は、この歴史を変えたいと思っているのです。」
「変えて、どうしたいのですか?」
「ジームラ・ウントの統一は、結局失敗したのです。彼らの言う平和は、偽りでした。」
「どうして、そう思うのですか?」
「彼らは、彗星を破壊するときに、全市民による国民投票と、議会の議決でそれを行いました。しかし、それが失敗した際にどうなるのかは明らかにされていなかったのです。そして、彼らは一部の市民だけを避難させ、残りの市民は破滅するこの惑星に置き去りにしたのです。」
「その事を、あなたは非難しているのですか?」
「そうです。爆破の危険性と、失敗した場合に避難できるのは限定されているということを、初めに明らかにすべきだったのだと思います。」
「そうですか、そのような話をするためにあなたはここへ来たのですか・・・」
教主はセルナの話を聞いて、少しがっかりした様子だった。