◇<特集>東日本巨大地震を追う―波乱の東京市場(1)=史上3位の下落率、時価総額は急減
 東日本巨大地震の犠牲者の方々にはお悔やみを申し上げます。また、被災者の方々には、心よりお見舞いを申し上げます。

 11日に発生した東日本巨大地震は、週明け14日の東京株式市場を襲った。マグニチュード9.0の国内観測史上最大規模の激震が、経済活動の混乱をもたらし、東京電力福島第一原子力発電所の事故で不安心理が一気に増幅した。復興需要思惑から建設・住宅関連株や建設機械株などが局所的に物色されたが、大本では売り銘柄が続出した。リスク回避の動きは、現物株売りにとどまらず、先物にはヘッジ売りや投げ売りが走り、TOPIX(東証株価指数)先物はサーキットブレーカー(一時取引停止措置)が発動される事態に至った。日経平均株価は急落し、633円安の9620円引け。強力なサポートラインと見られていた200日移動平均線(9839円)を昨年11月17日以来約4カ月ぶりに大きく割り込んだ。

 翌15日は朝方から売り一色に染まり、崩落状態となった。日経平均株価は1015円安の8605円に沈み、心理的なフシ目となる9000円を撃破。下落率は10.55%と、1953年のスターリン暴落(10.00%)を上回り、史上3番目の下げを記録した。福島原発事故による放射性物質の漏えいが深刻な問題に発展し、ろうばい売りが下げを加速。日経平均先物には2度のサーキットブレーカーが発動されたが、先物売りは止まらず、現物株の投げを誘発するという負の連鎖に陥った。東証業種別株価指数では全33業種が下落し、値下がり銘柄数は全体の97%強に及ぶ全面安の展開となった。東証1部の出来高は57億7715万株と、前日に記録した最高水準の48億8361万株を軽く塗り替え、下値圏で売り圧力と買い戻し・逆張り勢力が対立したが、この2日間で時価総額は51兆円吹き飛んだ。

 16日は突っ込み買いが幅広く流入し、一転して指数は切り返した。寄り付き前の主要外資系証券9社の売買注文は、売り3120万株(392億円)に対して買い5190万株(652億円)と大幅な買い越し。主力株中心に海外勢の買い戻しや、新規マネーの流入が指摘されたほか、個人投資家の短期値幅取りの動きも強まった。原発問題がなお懸念されるなか、マーケットでは、与謝野馨経済財政担当相が15日、株価対策として過去に「株式を50兆円ぐらい買い上げる構想があった。まだ言及するのは時期尚早だが、そういう方法もある」と語ったことも支援要因として注目された。日経平均株価は5営業日ぶりに急反発し、488円高の9093円引け。東証業種別株価指数では全業種が上昇し、値上がり銘柄数は1500を超えた。相場急落の“震源地”とも言える東京電力<9501.T>は3日連続のストップ安比例配分の憂き目に遭ったが、全体の約9割が上昇する全面高商状となった。

 17日は再び動揺する。NY外国為替市場で円相場が急騰し、一時1ドル=76円25銭を付け、95年4月19日の最高値(79円75銭)を約16年ぶりに大幅更新した。震災や原発トラブルの影響で日本経済の先行き不透明感が強まり、国内投資家の外貨建て資産の売却思惑が浮上し、円買い・ドル売りが一気に進行した。円高懸念から、輸出関連株中心に売りが先行し、日経平均株価は9000円をあっさり割り込み、8639円まで下押した。その後、自衛隊による原発3号機の核燃料プール向け放水開始を受け、東電が原発事故後としては初めて完全合致で寄り付き、市場に少なからず安心感を与えた。とりあえず円高に歯止めがかかったこともあり、先物主導で指数も急速な引き戻しに入ったが、引けにかけて売り直され、131円安の8962円で取引を終了。続伸へのわずかな期待は途絶えた。

 週末18日は、為替介入を受けた円高修正を好感し、広範囲に物色され、244円高の9206円引け。7営業日ぶりに5日移動平均線(9097円)を上回った。文字通り、波乱の1週間であった。「震災」「原発事故」「円高」の三重苦に揺れた株式市場に展望は開けるのか。被災地の復興を祈りつつ、マーケットの再帰を願いたい。