岡村昭彦文庫は日本十進分類を使用しているが、岡村昭彦自身は独自の分類を用いていた。
有難いことに、その分類は『シャッター以前 岡村昭彦蔵書・著作目録』(岡村昭彦蔵書目録をつくる会,1988)という本に記録されている。
『シャッター以前』は希少本である。岡村昭彦文庫内のガラスケースに1冊展示してあるので、閲覧を希望する方は事務室に声を掛けてほしい。
さて、岡村昭彦の母方祖父・佐野常民(1822~1902)は「赤十字の父」として知られるが、「博覧会の父」とも呼ばれている。
OPAC検索によると、岡村昭彦文庫には28点の博覧会資料がある。
それらの博覧会資料は、『シャッター以前』では「Ⅶ章 図書館・書誌・辞典・年表・博物館・博覧会・その他」に分類されている。また「Ⅶ章は、図書館など総記にあたるもの」とある(p.ⅳ)。
が、それとは別に、岡村昭彦は、資本主義発達史という文脈で博覧会資料を収集していたのではないか――
岡村文庫内に、吉田光邦『万国博覧会 技術文明史的に』(NHKブックス、1970)が2冊ある。 いずれにも赤線が多数引かれている。
岡村は1冊では「内国勧業博覧会の歩み」、「この富国強兵政策の推進者は、最初に内務卿となった大久保利通だった」という辺りにとくに注目している(p.123-138)。
そして、もう1冊では「佐野常民」に関する箇所(p.77-p.88)にとくに注目しており、例えば、次のような箇所に横線を引いている。
「佐野がいかに博覧会をもって日本の近代化に役立たせようとしたかが知られる。」(p.85-86)
前述した28点のうち17点は1891年から1941年に かけての文献である。
(比留間)